2023 Fiscal Year Annual Research Report
重力の経路積分の発展および情報喪失問題に関する研究
Project/Area Number |
22KJ2070
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
姉川 尊徳 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 量子重力理論 / ブラックホール / ホログラフィック原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績の要点をそれぞれ説明する。 (1) 低次元ドジッター時空へのホログラフィック原理が新しく提案された。これを背景とし、低次元の場合のドジッター時空での量子複雑性の重力双対について詳しく調べ、結果としてあるタイプの幾何学的な量に関しては、その対応が機能しないことを明らかにした。さらに、高次元の場合において、ドジッター時空の幾何学的量が示す摂動に対する奇妙な応答から、対応する場の理論の物理量の振る舞いに制限を与えることに成功した。 (2) SYK模型は、重力理論が持つべき種々の性質を再現できる量子力学として注目されている。その再現にはSYK模型のもつランダム性が重要であると考えられているが、ランダム性を変化させることにより重力理論の持つ性質がどのレベルまで再現されるかを、数値計算により調べた。さらに、理論的にも、コード図と呼ばれる手法を用いて、ランダム性を減少させたSYK模型の振る舞いを解析した。 (3)Spectral Form Factorは、場の理論側のスペクトラムの微細な構造に起因するその典型的な振る舞いが、重力理論側においては非摂動的な量に対応していることが知られている量であり、具体的に量子重力理論の文脈での研究が行われている。我々は、これらの量をn点に拡張し、具体的にその振る舞いを調べた。
本研究は、量子重力理論の非摂動効果のさらなる理解と、ホログラフィック原理における場の理論への制限が主な目的であった。研究期間全体を通じ、これらへの理解が深まったと考える。特にドジッター時空のホログラフィック原理において、具体的な場の理論への制限を得ることができた。ドジッター時空におけるこの対応は、現状よく知られたAdS/CFT対応を超え、我々の宇宙のモデルに対する量子重力理論を定義できうるという意味で、これからも注目していきたい。
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