2022 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚レジデントメモリーT細胞の発現分子が乾癬病態形成に及ぼす影響の検討
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21J20907
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久米 美輝 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 皮膚レジデントメモリーT細胞 / 尋常性乾癬 / ケラチノサイト / セマフォリン4A |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、T17の免疫応答を制御するSEMA4Aの発現が、ヒト表皮において、健常人と比較し乾癬の病変部・非病変部で低下していることを免疫染色で確認した。そこで、SEMA4Aを欠損したマウス(SEMA4A欠損マウス)と野生型マウスにおいて、マウス乾癬様皮疹誘発モデルを使用し、乾癬の病態形成とSEMA4Aの関わりの検討を開始した。SEMA4A欠損マウスに応答性が微細な条件の相違によって異なることが分かってきた。さらに、疾患モデルを生じる前のnaiveな状態において、SEMA4A欠損マウスでは既に表皮肥厚傾向がみられることが病理組織像から判明した。さらに、免疫染色の結果からも真皮内T細胞浸潤数が増えていることを確認した。フローサイトメトリーの結果からは皮膚内のレジデントメモリーT細胞(TRM)の割合が増加していること、表皮ではT細胞におけるVγ2+T細胞、Vγ2-Vγ3-TCRγδ+T細胞の割合がSEMA4A欠損マウスで増加していること、それぞれの分画内でのIL17A産生細胞がSEMA4A欠損マウスで増加していることが判明した。さらに、qRT-PCRの結果から、SEMA4A欠損マウスの表皮でCCL20、TNFα、IL22が上昇していることを確認した。また、マウス単離ケラチノサイトのqPCR結果から、マウスケラチノサイトのSEMA4A発現強度が分化度に依存しないことを確認した。ケラチノサイトのSEMA4Aの発現の有無、強度が、表皮肥厚、皮膚内細胞浸潤、特にTRM構築に寄与している可能性、さらに、TRMの機能に寄与している可能性について、今後ヒト検体やマウスモデルを通して検討を進める予定である。また、尋常性乾癬や円形脱毛症、皮膚リンパ腫といったヒトの様々な疾患でも皮膚TRMの評価をflow cytometry や組織染色などで行い、データを蓄積して疾患ごとの特性を見出す所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、SEMA4A欠損マウスと野生型マウスにおいて、イミキモドを使用するマウス乾癬様皮疹誘発モデルを使用し、乾癬における皮膚レジデントメモリーT細胞とSEMA4Aの関わりの検討を開始した。flow cytometry での解析から行うこととしたが、実験開始後しばらくは皮膚内T細胞を十分量flow cytmetoryで確認するための処理方法や細胞染色時の抗体濃度の検討することに時間を要した。また、Th17傾向のある多発性硬化症の患者で特に血清中のSEMA4Aが上昇していることが知られいるため、マウス乾癬様皮疹誘発モデルではSEMA4A欠損マウスの耳介厚腫脹が低下するのではと予想していた。しかし、微細な条件の変化で耳介腫脹が変動することが明らかとなり、乾癬様皮疹誘発モデル作成時のIMQの外用量を変するなどして2021年度は進捗状況に遅れが生じた。しかし、naive な耳での耳介厚がSEMA4A欠損マウスで野生型よりも厚いこと、flow cytometry にて接触皮膚炎モデル作成後のSEMA4A欠損マウスの耳に細胞浸潤が 明らかに多かったことから、まずはnaive な耳の解析を進めることとした。2022年度は、浸潤T細胞分画の解析や、表皮、単離ケラチノサイトのqRT-PCRを行い、naiveな状態の解析を進めた。また、同時にヒト乾癬検体における検討も進めることができた。ヒトとマウスの結果から、SEMA4A欠損マウスの皮膚は乾癬非病変部に類似しているのではと仮説を立てることができた。2022年度後半は、ウエスタンブロットによる検討を開始し、手技取得・条件検討などに時間を費やしたが、2023年度はそれらを踏まえマウスやヒトの表皮、ケラチノサイトを用いて細胞内シグナルの検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度までの検討で、野生型マウスと比較しSEMA4A欠損マウスでは表皮肥厚が見られること、浸潤T細胞の数が増加すること、表皮内T細胞の分画の違いがあること、それらの分画においてIL17A産生が増加していること、表皮においてIL17AだけではなくTNFαやIL22、CCL20といったサイトカインやケモカインの産生が増加していることを明らかにすることができた。今後は、これらの差異がケラチノサイトの細胞内シグナルが変化していることに由来するのか、浸潤T細胞が増えていることに由来するのかを検討するため、野生型マウスとSEMA4A欠損マウスにガンマ線を照射し、野生型マウスの骨髄球を移入したキメラマウスを作成し、表現型などに違いが生じるかを検討したいと考えている。もしこれらの差異がケラチノサイトに起因するという結果が得られれば、ケラチノサイト細胞内シグナル、特にmTORシグナルに違いがないかを検討したいと考えてる。そのために、マウスの表皮や単離ケラチノサイトから蛋白抽出を行い、ウエスタンブロットを行う予定である。また、ヒト健常人と乾癬患者の病変部・非病変部の表皮においてmTORシグナルの違いがあるのかも検討予定である。さらに、SEMA4Aには様々な受容体が存在することが過去の報告から知られているため、表皮ケラチノサイトにおけるSEMA4Aの主たる受容体を確認したい。そのために、マウス・ヒト表皮とケラチノサイトにおけるSEMA4Aの受容体の発現をqPCRにより確認する予定である。さらに、in vitroでSEMA4Aの受容体に対する抗体を用いたり、siRNAによりSEMA4Aの受容体の発現を低下させることにより、ケラチノサイトにおける細胞内シグナルの変化を確認したい。
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