2021 Fiscal Year Annual Research Report
カンドルと対称空間の観点からの結び目の不変量の研究
Project/Area Number |
21J21482
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷口 雄大 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | カンドル / 結び目 / 対称空間 / ねじれアレキサンダー不変量 / 対称カンドル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は結び目の分類問題を中心とする結び目の不変量の研究に対してカンドルと対称空間という観点から取り組み、結び目の幾何的情報を代数的に特徴づけることである。この目的を達成するために、今年度は大きく分けて2つの研究を行った。 (1)アレキサンダー組を用いたカンドルの不変量の研究に取り組んだ。今年度では、昨年度に研究代表者によって構成された「カンドル2コサイクルに付随したアレキサンダー組」を用いて構成されるカンドルの不変量をカンドルの2次ホモロジー群を用いた特徴づけを行った。昨年度までに得られた結果は結び目の図式に依存した証明であったが、証明の見直しを行うことによって一般の連結なカンドルに対して同様の事実が成り立つことを示した。また石井敦先生(筑波大学)と大城佳奈子先生(上智大学)によって構成されたカンドルのねじれアレキサンダー不変量に対して、アレキサンダー組を用いたカンドルのホモロジーを用いて記述できることも示した。 (2)対称カンドルの研究に取り組んだ。対称カンドルとはカンドルと良い対合写像の組のことであり、対称カンドルを用いることで向きのついていない結び目の不変量を構成することが出来る。また当初の研究対象であった平坦なカンドルや球面の回転がなすカンドルは対称カンドルの一種であるので、より統一的な視点から考察するために対称カンドルの基本的性質の研究を行った。本年度は対称空間におけるリー群の対称対を参考に対称カンドルの構成方法を与えた。また全ての対称カンドルはこの構成方法から作られたカンドルの非交和と同型であることを示した。これらの結果は論文にまとめ、arXiv上で公開中である。 また今年度は国内の3つの研究集会において本研究に関連する招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前から研究していた「カンドル2-コサイクルに付随したアレキサンダー組」を用いたカンドルの不変量の特徴づけを与えたことや、カンドルのねじれアレキサンダー不変量にホモロジー理論からの解釈を与えたことは大きな進展である。一方で具体例の構成については今後も研究を進めていく必要がある。 また今回与えた対称カンドルの構成法は今後対称空間とカンドルという視点から研究を行う上で有力な研究手段になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
アレキサンダー組を用いたカンドルの不変量の具体例や性質について引き続き研究を行う。そのためにもアレキサンダー組の構成方法について研究していきたい。またカンドルのねじれアレキサンダー不変量については群のねじれアレキサンダー不変量で知られている事実の拡張を試みたい。 対称カンドルについて基本的な性質、特に良い対合写像を持つようなカンドルの特徴などを詳しく調べていきたい。 またカンドルを用いた曲面結び目の不変量についても研究を始めており、そちらについても研究を進めていきたい。
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