2021 Fiscal Year Annual Research Report
損傷リソソーム応答の連携を担うTRIM21の作用機構とその生理学的意義の解明
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21J21647
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小倉 もな美 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | リソソーム / 損傷リソソーム応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体分子の分解を担う細胞小器官であるリソソームは、取り込んだ多様な物質により損傷を受け、炎症応答や細胞死を惹起する。細胞はこれに対処すべく損傷リソソーム応答と呼ばれる機構を有し、細胞の恒常性を維持している。損傷リソソーム応答は損傷の修復、細胞内大規模分解システム・オートファジーによる損傷リソソームの選択的除去(リソファジー)、リソソーム関連遺伝子のマスター転写因子・TFEBの活性化によるリソソームの生合成促進など複数の応答から構成される。しかしながらこれらの詳細な制御メカニズムに関してはほとんど明らかとされていない。そこで本研究では、損傷リソソーム応答の新規制御因子の同定とその作用機序解明を目的とした。我々はこれまでに損傷リソソーム応答の新規制御因子候補を複数取得しており、本年度はその中の一つであるTRIM21について解析を行った。TRIM21はユビキチンE3リガーゼであり、リソソーム損傷時にはユビキチン化が損傷の目印として働き、リソファジーの進行に重要であることが報告されている。そこで我々はまず、TRIM21欠損細胞におけるリソソームのユビキチン化を評価した。その結果、TRIM21の欠損によりユビキチン化が低下していた。また、TRIM21欠損細胞におけるTFEBの活性化状態を評価したところ、TFEBが恒常的に活性化していた。これらより、TRIM21がリソファジーとTFEB活性化という二つの経路を制御する因子であることが示唆された。さらに、我々はTRIM21以外にも損傷リソソーム応答を制御する新規因子の同定に成功しており、その作用機序についても解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は新規リソソーム応答制御因子候補であるTRIM21について、その作用機序の解析を主に行なった。その結果、TRIM21がリソファジーとTFEB活性化の二つの経路を制御していること、またリソファジーについてはTRIM21がユビキチン化酵素として働く可能性を示唆する結果を得ることができた。また、TRIM21だけではなく、さらなる新規制御因子の同定にも成功した。以上より、本研究の目的達成に向け研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、TRIM21、そして新たに同定した新規制御因子の両者について並行して解析を行ない、より多面的に損傷リソソーム応答の制御機構の解明に取り組む。TRIM21については、本年度に引き続き、リソファジー及びTFEB活性化の作用機序について解析を実施していく。もう一つの因子については、リソソーム損傷時の局在解析を行う他、欠損細胞を用いて各損傷リソソーム応答経路への影響を評価する。さらに、これら因子による損傷リソソーム応答制御の生理的意義を明らかとするため、マウスや線虫を用いた検討を開始する。
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