2022 Fiscal Year Annual Research Report
損傷リソソーム応答の連携を担うTRIM21の作用機構とその生理学的意義の解明
Project/Area Number |
21J21647
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小倉 もな美 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | リソソーム / リソソーム損傷応答 / ミクロオートファジー / ESCRT / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体分子の分解を担う細胞小器官・リソソームは取り込んだ多様な物質により損傷を受けると、炎症や細胞死を誘導する有害な存在へと変貌する。これに対し、細胞はリソソーム損傷応答と総称される複数の機構を駆使し、細胞の恒常性を維持している。本応答は修復・分解・生合成の3つに大別され、各機構が協調的に働きリソソームの機能を維持していると考えられているが、その制御機構はほとんど解明されていない。また近年、リソソーム損傷の蓄積が神経変性疾患など種々の加齢性疾患や老化に寄与することが明らかとなりつつあるが、これら疾患や老化におけるリソソーム損傷応答の役割は不明である。そこで本研究ではリソソーム損傷応答の制御機構とその生理学的意義の解明を目的とした。本年度は、初年度に同定したリソソーム損傷応答の新規制御因子の一つであるSTK38にフォーカスし、その作用機序と老化との関係について解析を行なった。STK38は損傷を受けたリソソームにリクルートされ、細胞内分解システムとして知られるオートファジーの一形態・ミクロオートファジーによるリソソーム修復に必要であることが明らかとなった。本経路は膜の切り離しを行うタンパク質複合体ESCRTを必要とし、STK38はESCRT因子の一つ、VPS4のリクルートを介して本経路を制御していることが示唆された。またSTK38の発現抑制により細胞老化とそれに伴うリソソーム損傷の蓄積が亢進し、線虫ではリソソーム損傷の増加と寿命の短縮が認められた。本研究により、STK38がミクロオートファジーによるリソソーム修復を制御していること、そして本経路が老化に伴い蓄積したリソソーム損傷の修復に働き、老化抑制や寿命延長に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまでに同定したリソソーム応答制御因子候補の中でもSTK38に着目し、その作用機序解析並びに生理学的意義として老化への影響を評価した。その結果、STK38がミクロオートファジーによるリソソーム修復に寄与していること、また本因子によるリソソームの恒常性維持が細胞や個体の老化に対して抑制的に働くことを示した。本成果はすでに学術誌へ投稿、現在査読中であり、目的達成に向け研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、STK38によるVPS4のリクルート制御機構について解析を行い、本年度までに明らかとしたリソソーム損傷に対するミクロオートファジーの制御メカニズムをより詳細に明らかとしていく。既にオミクス解析によりSTK38の下流因子候補を同定しており、今後はSTK38とその下流因子に関する解析を主軸に研究を推進していく。
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Research Products
(4 results)