2022 Fiscal Year Annual Research Report
気道炎症を抑制する内因性脂質の同定とその作用機序の解明
Project/Area Number |
21J22863
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊東 瑛美 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 脂質メディエーター |
Outline of Annual Research Achievements |
重症喘息患者において、脂肪酸代謝酵素12/15-LO活性の低下が報告されている。実際に、12/15-LO欠損マウスにおいて気道炎症の増悪化が認められているが、 その炎症抑制機構の全体像は明らかではない。本研究では、12/15-LOに代謝される抗炎症性メディエーターの同定及びメカニズムの解明を目指す。具体的には、生体内の微量な脂肪酸を網羅的に計測できる高感度質量分析装置を用いて12/15-LO欠損に伴い減少する脂質メディエーターを特定し、これが抗炎症効果をもたらすか否かを明らかにする。さらに、上記抗炎症性メディエーターの受容体を、シグナルに応じて発光するレポーター細胞株を用いて戦略的に探索し、標的細胞の候補を絞り込む。また、レポーター細胞システムとnon-targetedメタボロミクスを組み合わせた免疫細胞活性化因子の探索というアプローチからも炎症制御の鍵を探る。 本年度は、12/15-LO代謝脂肪酸の気道炎症への寄与を評価するため、喘息モデルマウスにこれらの化合物を投与したところ気道炎症が抑制された。このことから、12/15-LOの代謝異常による抗炎症性脂肪酸の低下が喘息病態に寄与していることが示唆された。また、別のアプローチから喘息の病態の形成に寄与する自然免疫型T細胞の活性化因子の探索を行い、内因性脂質化合物を同定した。これらの結果から、脂質代謝異常と、免疫細胞による代謝物認識が喘息病態に関わることがわかってきた。本成果は、国内外の学会で発表を行い、現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重症喘息患者において、好酸球やマクロファージといった自然免疫細胞の代謝異常が認められている。特に脂肪酸代謝酵素12/15-LOの活性の低下が報告されているが、その因果は不明であった。これまでに、12/15-LO欠損マウスのメタボローム解析を行ったところ、野生型と比較してDHA由来の抗炎症性メディエーター(10,17-diHDoHE; Protectin D1)の産生低下が認められた。そこで、これらの脂質化合物をサイトカイン誘導性喘息モデルマウスに投与したところ、気管支炎症増悪の抑制が認められたことから、抗炎症性メディエーターの代謝異常が喘息病態に寄与していることが示唆された。 また、肺などの粘膜組織に局在し、ペプチドではない多様な構造の物質を認識して喘息の病態を形成する自然免疫型T細胞が存在する。そこで、T細胞受容体シグナルに応じて発光する抗原活性検出細胞系とメタボローム解析を組み合わせることにより、活性化因子の探索を試みた。その結果、胆汁酸代謝化合物を自然免疫型T細胞の脂質抗原として同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
「レポーター細胞を用いた新規免疫活性因子の探索」受容体を発現させることにより刺激に応じて蛍光を発するレポーター細胞システムを利用して、喘息の病態に寄与する自然免疫型T細胞の活性化因子を探索する。HPLCで分画した生体サンプルでレポーター細胞を刺激し、受容体との 結合及び細胞活性を評価する。さらに活性が認められる画分をnon-targetedメタボロミクスやNMRの解析によりその構造を同定する。 「生理的意義の解明」同定した化合物がどのようにして炎症増悪に寄与しているか明らかにする。具体的には、CRISPR/Cas9 システムを用いて活性化合物欠損マウスを作製し、このマウスを用いて気道炎症が抑制されるか否か評価する。
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