2021 Fiscal Year Annual Research Report
Propagation of a-synuclein in Parkinson's disease progress
Project/Area Number |
21J23483
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
洪 斌 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 老化 / グリア / a-synuclein / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:老化グリアにおける異常蛋白質クリアランス能の低下に着目し、加齢とともにパーキンソン病を発症し易くなるメカニズムを検討し、新規治療のための基盤を構築する。
研究実施計画:In vivo実験において、パーキンソン病発症に関わる凝集蛋白質であるα-synuclein fibrilをマウスの線条体に注入する事でパーキンソン病モデルマウスを作成した。老齢及び若齢マウスの線条体に、α-synuclein fibrilのクリアランス能を比較検討した。In vitro実験において、グリアの培養継代を繰り返す事で老化グリアのモデルを構築した。老化グリア及び初代グリアにおけるα-synuclein fibrilのクリアランス能を比較検討した。
研究結果:1.マウスの線条体にα-synuclein fibrilを注入してから5日後のα-synuclein fibrilの残存レベルを比較検討したところ、若齢マウスと高齢マウスの線条体においてα-synucleinの残存レベルは変わらないが、1ヶ月後に比較検討したところ、高齢マウスの線条体に残存するα-synuclein fibrilの方が多いことが示された。2.継代を繰り返したグリアにおいて、老化マーカーの発現が増える。以上のことから、継代を繰り返したグリアを『老化グリア』として以下の実験に用いた。初代グリアおよび老化グリアにα-synuclein fibrilを添加し、1時間ほどインキュベーションした後、培地をウォッシュアウトし、その後1, 2, 6および24時間後に細胞を回収し、細胞内に残るα-synuclein を測定した。その結果、老化グリアおいてα-synucleinの残存が初代グリアと比較して多いことが示された。以上の事より、老化グリア細胞ではα-synuclein fibrilのクリアランス能が顕著に低下していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究進捗において、当初の計画では予期していないことが起きた。当初の研究計画においては、老齢マウスにおけるα-synucleinの伝播を検討する事でパーキンソン病病態の解明を目指していた。しかしながら、老齢マウスの線条体にα-synuclein fibrilを10μg注入してから3ヶ月経過しても、伝播の指標として用いられるリン酸化α-synucleinの免染を行ったが、伝播する先と見られる中脳黒質においてもシグナルが見出せなかった。未だ不明であるものの、主に2つの理由があると考えられる。その1つ目の理由として、α-synucleinが中脳黒質まで伝播するために、3ヶ月ではまだ短い可能性が考えられる。理由の2つ目として、今回用いているα-synucleinのリコンビナント蛋白質はヒト由来のものなので、マウスの脳内において他の分子との相互作用などの観点から伝播し難くなっている可能性も考えられる。ただ一方で、α-synuclein fibrilをインジェクションしたマウス線条体において、老齢マウスの方はα-synucleinのシグナルが3か月以上残存したままであるが、若齢マウスではα-synucleinのシグナルが非常に早期で消失していることが示された。近年、α-synucleinのクリアランスを担うグリアの役割について、パーキンソン病の発症メカニズムの観点から注目が集まっている。特に老化を示すグリア細胞とパーキンソン病の病態発症との関連性が徐々に明らかになりつつある。本研究において、老化グリアにおける異常凝集した蛋白質のクリアランス能の低下に着目することで、加齢とともにパーキンソン病を発症し易くなるメカニズムを検討し、新規治療のための基盤を構築することを目的とするために、研究テーマの計画に若干の修正が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究結果から、老化グリアにおけるα-synucleinのクリアランス能が低下することが示されている。今後の研究推進方策として、クリアランス能の低下が何に起因するか検討することを今後の研究重点とする予定です。細胞における異常蛋白質をクリアランスするための経路は主にオートファジー経路とプロテアソーム経路がある。本研究で用いている培養細胞モデルにおいてオートファジー経路の阻害剤を添加したところ、初代グリアおよび老化グリア両方とも、α-synucleinのクリアランス能が著しく低下したことから、グリア細胞における異常蛋白質のクリアランス能はオートファジー経路が担っている事が示唆された。今まで知られているオートファジー経路にはマクロオートファジー、ミクロオートファジーおよびシャペロン介在性オートファジーの3つのタイプが知られている。それぞれのタイプに特徴的な分子があるので、それら分子の動態を今後検討してくことで、老化グリア細胞における、直接的にα-synucleinのクリアランスに関わるオートファジー経路を同定する予定である。同定することで、その特徴的なオートファジー経路を薬理学的、あるいは遺伝子学的にマニピュレートすることででき、それにより老化グリアにおいてもα-synucleinのクリアランス能を回復・改善させることができるか検討していく予定である。
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