2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22KJ2105
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
志摩 喬之 奈良県立医科大学, 医学部, 助教
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | リソソーム / オートファジー / リソソーム損傷応答機構 / リソファジー / ユビキチン |
Outline of Annual Research Achievements |
多数の加水分解酵素を含むリソソームは、細胞内外の物質の分解を担うオルガネラである。リソソームは細胞内外の様々な因子 (シリカ、酸化ストレス、尿酸結晶など)によって損傷を受けることが報告されているが、リソソームの内容物が細胞質に放出されることは、炎症、酸化ストレスなどを惹起し、細胞に害を及ぼす。 近年、損傷したリソソームの膜修復や除去に働く「リソソーム損傷応答経路」が複数見出された。その中の一つ、損傷したリソソームをオートファジーによって選択的に隔離する「リソファジー」も、細胞の恒常性維持において重要な役割を有する。しかしながら、損傷リソソームの認識機構や、リソファジーを駆動するタンパク質やその挙動の実態といった、リソファジーの分子機構に関する知見は未だ乏しい。 これまではリソファジーの定量的測定法として、損傷リソソームマーカーGalectin3の輝点形成及びその消失を指標に、損傷リソソームのクリアランスを計測していた。しかしながら従来の評価法ではリソファジーと他の損傷応答経路を区別することができない。 本研究では、pHにより励起波長が変化する蛍光タンパク質mKeimaを用い、リソファジーを評価するためのプローブを開発した。従来のアッセイ法と比較し、本プローブがよりリソソファジーを特異的に検出できることを実験的に証明した。加えて、このプローブを用いて、TFEBとp62がリソソーム損傷応答には重要であるが、リソファジーには重要ではないことを示した。さらに、このプローブを用いたミニスクリーニングにより、ユビキチン化に関与する因子UBE2L3、UBE2N、TRIM10、TRIM16、TRIM27がリソファジーに重要だということを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、mKeimaを用いることで新規リソファジー評価系の構築に成功した。この新規評価系は従来の評価系と比べて、よりリソファジー特異的なアッセイ法である。本年度では、この新規プローブの詳細な評価をおこない、これまでリソファジーに機能すると考えられていたTFEBとp62が、リソファジーではなく、他の損傷応答経路に機能しうることを見出し、加えてリソファジーに重要なオートファジックアダプターの同定に成功した。さらに、リソファジーの初期段階に機能する因子(UBE2L3、UBE2N、TRIM10、TRIM16、TRIM27)の同定に成功した。以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発した新規プローブの、他のモデル生物への導入を試みる。 加えて今回同定した新規因子の詳細な解析を進めることで、リソファジーの分子メカニズムの解明を試みる。
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