2022 Fiscal Year Annual Research Report
夫婦の親密性に潜むジェンダー・ポリティクス:現代日本における妻の葛藤に着目して
Project/Area Number |
22J11421
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 玖美子 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 夫婦 / 親密性 / 感情 / ジェンダー / 混合研究法 / Web調査 / ペア・データ |
Outline of Annual Research Achievements |
1990年代以降の共働き夫婦の増加と男女共同参画の推進のなかで、ジェンダー役割からの脱却が社会的課題として認知されつつある。本研究の目的は、夫婦の絆に潜むジェンダー・ポリティクスの観点から、コミュニケーション上の葛藤を手がかりとして夫婦の親密性の現状を明らかにし、夫婦関係、ひいては日本社会でのジェンダー平等の実現に向けた萌芽と課題を措定することである。具体的には、①女性たちはどのような夫婦の親密性を求めているのか(理想・ニーズ)、そして、②実際にはどのような情緒的サポートが相互になされ、それをどう受け止めているのか(現実・葛藤)をリサーチ・クエスチョンとする。これら2点について、混合研究法により、個人の具体的な日常生活での経験をマクロな日本の夫婦の議論のなかに位置づけ、「女性=情緒的役割」というジェンダー・ポリティクスの影響について考察する。 2022年度は、上記①②に関して日本の夫婦の現状をマクロレベルで明らかにすべく、全国の20~50代の既婚の男女計1000人を対象にWebパネル調査を行った(研究Ⅰ)。研究計画では、予算の関係から女性のみの調査を予定していたが、実際には男性も対象に加え、より多角的かつ規模の大きい調査ができた。その結果からは、夫婦関係に関する意識や感情面でのジェンダー非対称性の実態を大まかに把握することができた。また、①②について日常的文脈で詳細を明らかにするインタビュー調査を開始し、10組20人に実施した(研究Ⅱ)。調査協力者を募る過程で、調査対象者の条件を一部変更する必要があったが、結果的にはペアでデータをとることができ、より充実したデータが得られた。加えて、夫婦の親密性における感情面でのジェンダー非対称性をとらえる理論的視座・学説の検討、夫婦の対等性に関するより規範的な議論の検討も行った。それらの成果として査読付き論文2本が公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Web調査、インタビュー調査ともに、細かな点で計画から多少変更・調整することになったが、結果的には、夫婦関係をめぐる意識や実態について、計画どおり、または、予想以上に豊富なデータを収集することができた。また、日本家族社会学会などの大会参加や『ソシオロジ』などへの論文投稿を通じて、成果発表や最新の研究動向の把握、さらなる研究の進展のための研究者とのディスカッションも十分に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、夫婦関係の現状について、より詳細に把握するため、Web質問紙調査のデータを用いて、計量分析を進める(研究Ⅰ)。また、インタビュー調査で得たデータの分析も行う。当初の計画を変更してペア・データを収集できたことで、分析がより複雑なものとなっているため、分析手法についても関連文献や先行研究をもとに検討を深める必要がある。さらに、必要に応じて追加調査を行い、より厚みのある分析や、夫婦の親密な関係の現状についてのより深い考察をめざす。データの分析と並行して、関西社会学会や日本女性学会などの国内学会での成果発表、および、査読付き論文の投稿を行う。分析の進捗をみながら、国際学会での発表や英語論文の執筆の準備を進める。
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