2023 Fiscal Year Annual Research Report
即時的抗うつ効果の神経メカニズムの解明とその治療応用
Project/Area Number |
22KJ2161
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横山 玲 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | R-ケタミン / うつ病 / 社会的孤立 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、R-ケタミンの島皮質を介した神経メカニズムを解明することを目的としている。そこで本年度は、以下の成果を得た。 ①再社会化マウスの島皮質の経時的神経活動計測 社会的隔離は、新奇マウスに対する恐怖反応を誘発することから、マウスを隔離飼育の後に群飼育に戻し再社会化させ、島皮質の神経活動に与える影響を検討した。ファイバーフォトメトリ法により社会性行動時の島皮質の神経活動を解析した結果、再社会化マウスは、隔離飼育マウスと同様に、物体やマウスとの接触時の神経活動の差が減弱しており、R-ケタミン投与によりマウス接触時の神経活動が有意に強く活動した。よって、社会的恐怖反応はR-ケタミンによる島皮質活性化に影響しないと考えられる。また、この活性化作用がマウスの区別に関与するかを検討すると、新奇マウスに対してケージメイトよりも有意に強い反応を示した。このことから、R-ケタミンにより回復する島皮質の神経活動が他者を区別する機能にも関与する可能性がある。 ②島皮質活性化のメカニズムの探索 R-ケタミンの島皮質活性化メカニズムを解析するため、3週齢マウスの島皮質錐体細胞のホールセルパッチクランプ記録を行った。膜電位を-80mVに固定し、R-ケタミン投与前後の電流を測定したが、有意な変化はなかった。これにより、R-ケタミンが島皮質において、リガンド依存性チャネルを介して作用していないことが明らかになった。また、BDNF-TrkBシグナル伝達系が関与を解析するため、TrkBアンタゴニストANA-12処置マウスにR-ケタミンを投与し、行動試験を実施した。その結果、長期隔離飼育マウスにおいて、ANA-12処置はR-ケタミンによる強制水泳試験での抗うつ作用や社会性行動に関連する島皮質の活性化作用に影響せず、R-ケタミンによる島皮質活性化にBDNF-TrkBシグナル伝達系が関与しない可能性が明らかになった。
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