2023 Fiscal Year Annual Research Report
35型アデノウイルスを基盤とした革新的な腫瘍溶解性ウイルス製剤の開発と機能評価
Project/Area Number |
22KJ2163
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野 良輔 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | 腫瘍溶解性ウイルス / アデノウイルス / 腫瘍溶解性アデノウイルス / NK細胞 / がん免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、新たながん治療法として大きな注目を集めている腫瘍溶解性ウイルスの魅力の一つとして、抗腫瘍免疫の活性化が挙げられる。これまでに所属研究室では、従来の腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd)が有する抗腫瘍効果の減弱が懸念される性質を克服可能な新たなOAdとして、ヒト35型アデノウイルスを基盤とした35型OAdの開発に世界に先駆けて開発に成功した。一方で、35型OAdによる抗腫瘍免疫の活性化機構は、明らかになっておらず、今後の臨床応用に向けて解析が急がれる状況である。そこで本研究では、35型OAdによる抗腫瘍免疫の活性化レベルおよびその誘導機構を解明することを目的に、自然免疫応答、その中でも特にナチュラルキラー(NK)細胞に注目した解析を行った。ヒトがん細胞を移植した免疫不全のヌードマウスならびマウスがん細胞を移植した正常な免疫を有するC57BL/6マウスに35型OAdを腫瘍内投与することで、活性化したNK細胞の腫瘍内浸潤が顕著に促進された。ヌードマウスならびにC57BL/6マウスにおける35型OAdの抗腫瘍効果はNK細胞を除去することで大きく減弱した。最終年度には、マウスがん細胞を移植したTLR9のノックアウトマウスに35型OAdを腫瘍内投与し、NK細胞の腫瘍内への浸潤と活性化を評価した。その結果、35型OAdによるNK細胞の腫瘍内浸潤の促進にTLR9が重要であることが示された一方、35型OAdによるNK細胞の活性化効果と皮下腫瘍の増大を抑制する効果にはTLR9が関与しないことが示唆された。マウスを用いた実験のみでなく、ヒト末梢血単核球細胞に35型OAdを感染させることで、35型OAdがヒトNK細胞も活性化することが明らかになった。研究期間全体を通じて得た結果は、がん免疫療法におけるNK細胞の有用性を示すとともに、35型OAdの臨床応用に向けた重要な知見である。
|