2023 Fiscal Year Annual Research Report
必須アミノ酸取込み阻害によるがん細胞増殖抑制の分子機構解明
Project/Area Number |
22KJ2171
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西窪 航 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞増殖 / がん細胞 / アミノ酸 / トランスポーター / LAT1 / SLC7A5 / 分子標的薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は L-type amino acid transporter 1(LAT1; SLC7A5)の選択的阻害薬による,がん細胞のアミノ酸の取込みの阻害が細胞増殖を抑制するメカニズムを,個々のアミノ酸の量的変化と機能から明らかにすることを目的としたものである。2022年度はアミノ酸の放射性同位体化合物を用いた輸送活性の測定をおこない,LAT1阻害薬が8種類すべてのLAT1主要輸送基質アミノ酸のがん細胞への取込みを大幅に阻害することを示した。それぞれのアミノ酸の取込みの阻害が示されたため,2023年度は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたアミノ酸の分離・定量解析系により,LAT1阻害薬添加後の個々の細胞内遊離アミノ酸量の時間変化を解析した。意外なことに,細胞内の遊離アミノ酸量が長期的に(24時間以上)大きく低下し続けるのは,特定の3種類のアミノ酸であることを明らかにした 。そこで,これらのアミノ酸を選択的に欠損させた培地で細胞を培養することで,それぞれの細胞内量を減少させた。これにより,細胞増殖の抑制に大きな影響を与える重要なアミノ酸を特定した 。さらに,既知のLAT1阻害薬の薬理作用であるアミノ酸関連シグナルタンパク質のリン酸化の変動や細胞周期の停止に加え,ミトコンドリア代謝活性,遺伝子発現プロファイルなどに与える影響を含めて多面的に解析した結果,LAT1阻害薬がもたらす多様な薬理作用は,今回特定された3種類のアミノ酸の細胞内量の減少によって概ね説明可能であることが明らかになった。以上の研究成果は,LAT1阻害薬の直接的な薬理作用を示す細胞内のアミノ酸量の変動の詳細を初めて明らかにし,さらにその変動が細胞機能に与える影響の解明を通じて,新規抗がん薬として開発が進むLAT1阻害薬のがん細胞増殖抑制の分子基盤の理解を進展させた。
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Research Products
(4 results)