2022 Fiscal Year Annual Research Report
応力を起点とした骨配向化機序解明とそれに基づく骨機能化誘導材料の創製
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22J20843
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松坂 匡晃 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | オステオサイト / メカノセンシング / 骨力学的機能適応、 / 骨異方性微細構造 / アパタイト配向化 / 細胞配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
寝たきりや宇宙滞在といった骨に加わる応力の異常は深刻な骨の脆弱化を招く。こういった骨脆弱化の治療・予防のためには、骨密度よりもはるかに強く骨の強度に寄与する骨配向性(骨基質中のアパタイトc軸/コラーゲン優先配向性)に基づいた解決策が必要であり、応力場に応じた骨配向性を制御する仕組みを理解することが重要である。本研究では生体内類似のin vitro共培養モデルを樹立することで、細胞・遺伝子レベルから骨配向化メカニズムを解明することを目指した。特に骨中の応力センサーであるオステオサイトと骨芽細胞の細胞間相互作用に着目し、骨配向化に直結する骨芽細胞配列の制御因子の同定を行った。骨芽細胞は人為的に分子配列を制御した配向化コラーゲン基板上で培養することで生体内の異方性環境を模擬しつつ、一方でオステオサイトにのみ独立して流体せん断刺激を負荷可能な共培養モデルの構築に成功した。これを用いることで、骨配向化制御には流体の加速度が支配的な流体パラメータであることが示された。次世代シーケンシングを用いた網羅的な遺伝子発現解析により、加速度に応じて骨芽細胞の配列を決定する最有力候補因子を絞り込むことに成功した。以上より、独自の共培養モデルの構築に成功し、骨芽細胞配列化をもたらす応力レスポンス因子を同定することで、配向性に基づく骨の機能適応の分子機序解明に大きな足がかりを得た。次年度以降は見出した制御因子による骨芽細胞配向化機序の解明を目指すとともに、遺伝子組み換えマウスモデルを作製し、応力レスポンス因子を介した配向化微細構造構築のメカニズムを解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和4年度では、生体内の配向化骨環境を模倣した共培養モデルの構築までを当初の計画としていたが、早期に最適なモデルの構築に成功したため、本モデルを用いて配向化制御遺伝子を見出すことに成功した。流体学的手法を駆使して作製した一方向配向化コラーゲン基板とモータ制御によるせん断刺激システムを独自に開発・導入し、オステオサイトと骨芽細胞の細胞間相互作用による配向化形成を理解可能な応力負荷異方性共培養モデルの樹立に成功した。特に、オステオサイトへのせん断刺激システムは流体シミュレーションによる予測とPIV(粒子画像流速測定)による実測を駆使して設計することで、定量的な流体制御を可能とし、オステオサイトの配向化制御応答を誘引する流体パラメータを解明することに成功した。骨芽細胞の配列制御において、オステオサイトは一定速度の流体刺激には応答せず、流速が変化する刺激に応答することが明らかとなり、さらにその流速の変化率、つまり加速度に依存して応答が増加した。すなわち、骨配向化制御には流体の加速度が支配的な流体パラメータであることが示された。さらには、次世代シーケンシングにより網羅的に遺伝子発現の定量解析を行うことで、数万個の遺伝子からオステオサイトが刺激に応じて骨芽細胞の配向化を制御する配向化制御遺伝子を絞り込むことに成功した。本成果については現在論文準備中であり、既に多数の学会発表にて高い評価(3件受賞)を得ている。以上より、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に見出した遺伝子の骨配向性制御における役割について、in vitroおよびin vivoの両面から解明する。さらには骨中における応力場⇔オステオサイトの配列方向(細管・樹状突起の進展方向)⇔アパタイト結晶配向方位の関係性に着目し、外場応力に対して最適化された原子レベルからの骨微細構造構築メカニズムの解明を目指す。具体的には、骨芽細胞に配向化制御因子を添加し、タンパク質産生解析を実施することで、骨配向化を制御する分子応答経路を解明する。加えて、遺伝子組み換えモデルを作製し配向化遺伝子の欠損が骨の機能適応に与える影響を解明する。遺伝子欠損骨に対して、骨形態・骨密度と同時に、微小領域X線回折法によるアパタイト結晶配向性および骨強度の定量解析を実施する。加えて、組み換えモデルに当研究室が保有する人為的応力負荷システムを導入および、シミュレーションを用いた応力場解析を実施し、応力と配向性の対応関係への配向化制御遺伝子の役割を解明する。
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