2022 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ構造を用いた電子・フォノン輸送制御による高性能磁気熱電変換材料の開発
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22J20965
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北浦 怜旺奈 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 熱電発電 / 半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、強磁性体/半導体界面を用いることで、ネルンスト熱電発電の性能向上指針である横ゼーベック係数の増大と、熱伝導率の低減に成功してきた。 2021年度日本磁気学会において、Co(強磁性体)/Si(半導体)積層構造において、Co単膜よりも横ゼーベック係数が増大することを発表し、本研究発表内容において、本年度の日本磁気学会にて、2022学生講演賞(桜井講演賞)を頂きました。 また、ネルンスト熱電発電における課題であった、横ゼーベック係数増大と熱伝導率の低減の同時実現が、強磁性体/半導体積層構造を用いることで達成でき得ることをAsia-Pacific Conference on Semiconducting Silicides and Related Materialsにて発表し、Young Scientist Awaedを頂きました。 強磁性体/半導体界面がもたらす、横ゼーベック係数増大の起源を探索するため、強磁性体/半導体の界面数、界面密度に着目し、強磁性体層、半導体層の層厚、積層数を緻密に制御した試料を新たに作製し、その熱電特性を評価した。その結果、界面数増大に伴う横ゼーベック係数の増大を観測した。これらを第19回日本熱電学会学術講演会で発表し、第19回日本熱電学会学術講演賞を頂きました。 また、この強磁性体層、半導体層の層厚、積層数を緻密に制御した試料において、ネルンスト熱電発電の性能の指数の一つである熱伝導率の低減に成功した。また、これらの熱伝導率測定で、強磁性体/半導体界面での界面熱抵抗の見積もりに成功した。これは、強磁性体/半導体界面での温度勾配を見積もることが可能な、強磁性体/半導体積層構造における横ゼーベック係数増大に重要な役割を示す特性である。これらを第六回フォノンエンジニアリング研究会において発表し、第六回フォノンエンジニアリング研究会優秀ポスター賞を頂きました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネルンスト効果を利用した熱電発電において、我々は、強磁性体/半導体界面を用いることで、ネルンスト効果を利用した熱電発電の性能向上指針である横ゼーベック係数の増大と、熱伝導率の低減に成功してきた。本年度は、強磁性体/半導体界面がもたらす横ゼーベック係数増大の起源の解明と、高い横ゼーベック係数が予想される強磁性体Fe3Siの開発、熱電特性評価を行った。 強磁性体/半導体界面がもたらす、横ゼーベック係数増大の起源を探索するため、強磁性体/半導体の界面数、界面密度に着目し、強磁性体層、半導体層の層厚、積層数を緻密に制御した試料を新たに作製し、その熱電特性を評価した。その結果、界面数が増えるごとに横ゼーベック係数が増大することを観測した。 また、分子線エピタキシー法により、巨大な横ゼーベック係数が予測されるFe3Si薄膜の開発に取り掛かった。Fe3SiはDO3構造の結晶が形成されている場合、その電子構造から高い横ゼーベック係数が予測されている。本年度は、高い横ゼーベック係数を示すFe3Si薄膜の作製方法を確立するため、組成比や結晶性を緻密に制御し、規則度(結晶中のDO3の割合)を制御したFe3Si薄膜の形成に成功した。しかし、昨今のHeガス不足等で熱電特性評価が十分に行ていないため、熱電特性評価は来年度に取り組んでいく予定だ。 そのため、我々の実験施設において、横ゼーベック係数の評価を行うために、横ゼーベック係数測定装置の開発を行っている。横ゼーベック係数測定は強磁場を印加可能な装置と温度勾配を印加可能な特有なサンプルホルダーの設計が必要である。この設備は現在開発中であり、これを完成させて測定を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において、まず、強磁性体/半導体界面の界面数を増やすことで横ゼーベック係数が増大することを発見した。このことから、この横ゼーベック係数増大の起源は界面付近の電子輸送によるものではないかと着目し、電子輸送の測定を現在行っている。来年度はこの電子輸送の解析を行い、強磁性体/半導体界面での横ゼーベック係数増大の起源探索を行う。 また、本年度、巨大な横ゼーベック係数を有する材料の開発を目的に、分子線エピタキシー法を用いて、組成比、結晶構造を緻密に制御したFe3Siの開発を行ってきた。来年度は、このFe3Si薄膜と、強磁性体/半導体界面での横ゼーベック係数増大を目的に、まず、半導体層との積層構造化した試料の開発を行い、巨大な横ゼーベック係数を有する材料の開発を目指す。その積層構造中に我々の独自技術である、半導体ナノドット構造を埋め込むことで、強磁性体/半導体界面割合を緻密に制御し、さらなる横ゼーベック係数の増大を目指す予定だ。半導体層、成長核には熱電特性上だけではなく、結晶成長上で最適な材料選択が必要であると考えられる。必要な元素の一部は既に保有しているが、一部の蒸着源に関して真空中の蒸着に必要な電流導入端子、加熱用電源は真空装置に取り付けられていない。そこで、来年度はナノドット作製のために真空装置の改良を行う。また、ナノドットの形状、サイズ、密度を緻密に制御し、単結晶Fe3Si/半導体超格子の作製方法を探索する。それに加えて、熱電特性の関係性を評価することで、ナノドットによる界面密度制御が、熱電特性を制御するのに有効であることを実証する。
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Research Products
(5 results)