2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22KJ2210
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
沖田 和也 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 拡散方程式理論 / 溶媒和ダイナミクス / エネルギー表示溶液理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022度に定式化を行った新規拡散方程式理論であるエネルギー表示のSmoluchowski-Vlasov方程式(ERSV)を水またはアルコール溶液系における蛍光分子近傍の溶媒和ダイナミクスへと応用し,新規理論に基づいた解析を行った. 脂質膜近傍のような不均一溶液系における分子ダイナミクスは生化学や光化学等の多くの分野において重要である.2022年度はこれらの現象を解析するための理論的基盤を構築することを目的として,平衡溶液理論の一つであるエネルギー表示溶液理論と非平衡統計力学理論の一つである射影演算子法を組み合わせることでエネルギー表示における新規拡散方程式理論(ERSV)を導出した.更に,新規理論を水中の溶媒和ダイナミクスへと応用し,その結果を分子動力学(MD)計算と比較することで新規理論の長時間領域における妥当性を確認した.2023年度はこの新規理論の更なる応用を目指して,脂質膜近傍の溶媒和環境解析において代表的な蛍光分子であるProdanを対象溶質とし,水またはアルコール類を溶媒とする4種類の溶液系に対して新規理論を適用した.その結果,いずれの溶液系においても新規理論は長時間ダイナミクスを記述可能であることが示され,新規理論がこれらの系に対して有効であることが確認された.また,新規理論による長時間ダイナミクスの予測のみならず,新規理論に基づいた系統的な解析も考案した.例えば,新規理論に基けば,ダイナミクスの時間スケールは静的な溶媒和構造に由来する部分と溶媒分子の拡散性に由来する部分とに分けて書くことができる.今回対象とした4つの系については静的な溶媒和構造に由来する部分は共通であることが分かった.よって,溶媒種ごとのダイナミクスの違いは主に溶媒分子の拡散性に由来するものであると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度までは新規理論の定式化に注力していたため,適用した系は一種類のみであった.2023年度は新規理論の更なる応用や系統的な解析を目指して水溶液系のみならずアルコール類を溶媒とする新たな溶液系を対象とした解析を行った.その結果,更なる系統的な解析を実現し,新たな知見を得ることができた.既にこれらの結果をまとめており,学術論文として受理済である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では昨年度に定式化した新規理論を水またはアルコール溶液系における蛍光分子周りの溶媒和ダイナミクスへと応用した.今後は,脂質膜近傍のようなより複雑な系における溶媒和ダイナミクスへと展開を行い,更なる発展を目指す予定である.
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Causes of Carryover |
次年度には研究を円滑に遂行するために計算機サーバーまたはPCを購入予定である.そのため,次年度使用額が生じている.
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