2022 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェンリボンのトポロジカル局在電子から創発する新奇物性機能の開拓
Project/Area Number |
22J22312
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
玉置 弦 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | トポロジカル物質 / トポロジカル局在状態 / グラフェンナノリボン / グラフェンナノリボンネットワーク / 電子間相互作用 / 秩序構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンナノリボン(GNRs)は近年、原子精度で精密に合成する技術の発展と特異的な物性の理論的発見により、新たなデバイス応用への可能性が期待されている。理論的発見として、GNRsの終端や接合において電子状態が局在するという特異な性質を持つことが認識され、一次元のトポロジカル絶縁体の性質を持つとして注目を集めている。そこで、私はGNRsを用いて更なる新規物性・機能を開拓するため、GNRsやその構造体であるGNRネットワークの電子物性を明らかにする研究を行なった。 2022年度は主として、グラフェンナノリボンの接合を周期的に配置したハニカムネットワークの電子状態の研究を推進した。接合に局在する電子数により、1電子局在GNRネットワークや2電子局在GNRネットワークと名づけ、電子間相互作用の大きさとドープ量をパラメータとして秩序構造を明らかにした。その結果、 1電子局在GNRネットワークにおいては、反強磁性・強磁性・電荷密度波が現れることを明らかにした。2電子局在GNRネットワークにおいては、スピン・電荷の秩序に加えて、軌道が秩序することを明らかにした。また、電子間相互作用の大きさやドープ量により、スピン・電荷・軌道が絡み合った多岐にわたる秩序構造が現れることを明らかにした。 本研究は、電子間相互作用を含めたトポロジカル局在電子に注目することにより、トポロジカル物理と強相関電子系の学理を発展させるものである。さらに、本研究の成果は、応用分野へと波及が期待される。GNRsやその構造体などトポロジカルな頑強性を併せ持つ低次元物質という新たな物質群を提案することで、グラフェンの高移動度性に加えて、透明で折り曲げることができるやわらかい強相関電子デバイス開発に貢献すると期待される。本研究で確立される新たな知見は、基礎・応用の広範な領域に対して重要な意味を持つものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェンナノリボンの接合を周期的に配置したハニカムネットワークにおける基底秩序構造を探索することができた。秩序構造に関わる電子状態による有効模型を作成し、平均場理論により自己無撞着計算を行なった。しかし、乱数初期値からの自己無撞着計算では基底状態に到達しないことがあり、大域最適化アルゴリズムを工夫する必要があった。本研究を通して得られた知見や手法は、今後の研究に大いに活用することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の方策として、金属有機構造体(MOF)や共有結合性有機構造体(COF)の秩序構造の解明に応用し、電子間相互作用による秩序構造の研究をすることを計画している。本年度得られた研究成果や知見は、GNRネットワークに限らず一般的な理論であるため、多岐の構造を設計可能なMOFやCOFにも適用可能であることがわかった。MOFやCOFはこれまで、多孔質材料としてガス貯蔵や触媒を始めとして研究が精力的に行われてきており、データベースなども整備されている。本研究では、MOFやCOF自体の電子物性を探索し、新規物性・機能を開拓することを目指す。
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