2022 Fiscal Year Annual Research Report
イオン輸送タンパク質のイオン輸送方向を決定する因子の解明:一方向性の理解と制御
Project/Area Number |
22J22606
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
潤井 泰斗 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ロドプシン / 共鳴ラマン分光法 / イオンポンプ / プロトン移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の機能と構造の関係を知ることは、これまでにはない機能を持つタンパク質の創成につながる。我々は、外向きと内向きのプロトンポンプの構造変化を明らかにし、比較することで、プロトンの輸送方向が決定される要因を明らかにする。 2019年に新しい内向きプロトンポンプのグループであるシゾロドプシンが発見された。我々は、7種類のシゾロドプシンの発色団構造の変化を、時間分解共鳴ラマン分光法を用いて明らかにした。測定の結果から、7種のシゾロドプシンで二種類のM中間体が観測された。早い時間帯に現れるM中間体は、これまでの微生物型ロドプシンと同様に、脱プロトン化状態で13-cis構造であることが分かった。一方で、遅い時間帯に現れる中間体は、脱プロトン化状態でall-trans構造をとることが明らかになった。このことは、レチナール発色団の再異性化がシッフ塩基の再プロトン化前に起こることを意味している。再プロトン化前に再異性化が起こることによって、シッフ塩基の孤立電子対の向きを細胞の外側に向けている。これにより、細胞外側からプロトンを受け取りやすくしている。このように、再プロトン化前の再異性化は、内向きのプロトン輸送に重要な構造変化であることが分かった。また、この構造変化はこれまでの微生物型ロドプシンでは観測されない、シゾロドプシンに特徴的な構造変化であった。 得られた結果をもとに、7種のシゾロドプシンのアミノ酸残基を比較し、発色団の再プロトン化前の再異性化を引き起こすアミノ酸残基を推測した。比較の結果から、5つのアミノ酸残基が再プロトン化前の再異性化を引き起こすと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
7種類のシゾロドプシンの培養方法、精製方法の確立には長い時間を必要とするが、大きな問題なく方法の確立ができた。また、測定に用いる測定装置も安定して稼働しており、進捗状況は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
シゾロドプシンで観測された、発色団の再プロトン化前の再異性化を引き起こすメカニズムをはっきりとさせる。これまでの研究結果から、再プロトン化前の再異性化を引き起こすアミノ酸残基が推測された。このアミノ酸残基の組み合わせを、シゾロドプシン以外のロドプシンに変異として加えることで、再プロトン化前の再異性化を示す内向きプロトンポンプの創成を目指す。
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