2019 Fiscal Year Annual Research Report
ライブイメージングとメタボロミクス解析の統合による腸腫瘍形成機構の解明
Project/Area Number |
19J00973
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
牟田 優 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2024-03-31
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Keywords | ライブイメージング / 活性動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌の発生には様々なシグナル伝達経路が複雑に関与しているが、これらのシグナル伝達経路の活性動態の変化と代謝経路との関係は十分に明らかになっていない。本研究は、ライブイメージング技術とメタボロミクス解析を統合した研究手法を確立することにより、腸腫瘍形成におけるERKの活性動態の変化が腫瘍の代謝ネットワークに与える影響を解明し、大腸癌の新規治療戦略の確立に貢献することを目的としている。この目的を達成するために、研究実施計画に基づいて本年度では、Notch経路やBMP経路といった腸上皮の恒常性の維持や腫瘍形成に重要とされるシグナル伝達経路とERK活性動態との関係を中心に研究をすすめた。特に、腸上皮において分泌系細胞への分化を制御していると知られているNotch経路に関して研究の進展が認められた。すなわち、ERKバイオセンサーを発現した遺伝子組み換えマウスから樹立した小腸オルガノイドと2光子励起顕微鏡を使用したライブイメージングによって、Notch経路が阻害された際に腸上皮のERK活性動態が変化することが明らかとなった。生化学的・分子生物学的手法による解析をすすめたところ、このERK活性動態の変化はEGFR経路を介しており、EGFR経路を阻害することによりERK活性動態の変化が打ち消されることが明らかとなった。また、Notch経路を阻害すると腸上皮で分泌系細胞への分化が誘導されることが知られているが、この変化も同様にEGFR経路を介してERK活性動態と関係していると考えられた。さらに免疫組織化学染色や遺伝子発現解析等により、Notch経路阻害とERK活性動態の変化にはNotch経路における中心的な転写因子であるAtoh1が関与していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりにERK活性動態と相互作用するシグナル伝達経路の一つとしてNotch経路を同定することができた。さらにAtoh1という転写因子がNotch経路阻害とERK活性動態の変化に関与しているという分子メカニズムも明らかとなった。以上から、本研究課題の進捗状況については、おおむね順調に推移していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的な遺伝子発現解析を行うことにより、ERK活性動態の変化に伴い発現が上昇または低下する遺伝子群を同定する。また、クロマチン免疫沈降解析によりNotch経路阻害にともないAtoh1などの転写因子と遺伝子の相互作用の変化をさらに解析する方針である。これにより、ERK活性動態の変化を制御する分子機構やAtoh1がその機構に果たす役割を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(1 results)