2020 Fiscal Year Annual Research Report
ライブイメージングとメタボロミクス解析の統合による腸腫瘍形成機構の解明
Project/Area Number |
19J00973
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
牟田 優 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2024-03-31
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Keywords | ライブイメージング / 活性動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌をはじめとした多くの悪性腫瘍の発生過程において、細胞内で様々なシグナル伝達経路とシグナル分子が複雑に関与していることが知られている。一方で、これらのシグナル伝達経路の活性動態がどのように細胞内の代謝経路と関係しているかは未だ十分には解明されていない。本研究は、ライブイメージング技術とメタボロミクス解析を統合した研究手法を確立することにより、腸腫瘍形成におけるERKの活性動態の変化が腫瘍の代謝連関に与える影響を解明し、大腸癌の新規治療戦略の確立の一助とすることを目的としている。この研究目的を実現するために本年度は研究計画に基づき、Notch経路阻害がERK活性動態を変化させる分子メカニズムのさらなる解明をめざし研究を進めた。まず、小腸正常腸上皮から作成したオルガノイドにおいて、Notch経路阻害薬であるγセクレターゼ阻害薬とEGFR阻害薬を投与し一定期間培養した後に、オルガノイドを回収しDNAマイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析を行った。Notch経路阻害によりEGFR経路依存的に発現が上昇した遺伝子群のプロモーター解析を行ったところ、NeruroD1やNhlha15、Atoh1など腸上皮において分泌系細胞への分化の際に必要な転写因子が同定された。以上より、Notch経路阻害による分泌系細胞への分化誘導作用はEGFR経路を介していることが網羅的遺伝子発現解析によっても示された。また、転写因子と遺伝子の相互作用の変化を明らかにするため、クロマチン免疫沈降解析を行った。抗Atoh1抗体によるクロマチン免疫沈降(ChIP)を施行したところ、Notch経路阻害によって増加したAtoh1プロモーター領域への結合がEGFR阻害薬によって抑制されている結果が得られ、Notch経路阻害によるエピジェネティックな変化もEGFR経路を介して制御されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に基づき、網羅的な遺伝子発現解析によって、ライブイメージングによって得られた知見の分子生物学的な制御機構の解析をさらに進めることができた。以上から、本研究課題の進捗状況については、おおむね順調に推移していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、微量サンプルでも解析が可能なヌクレアーゼを用いたCut & Runを利用してオルガノイドの培養系においてエピジェネティック解析を行う方針である。また並行して、 in vivoでのNotch経路阻害とEGFR-ERK経路の関係を解析するために、Notch経路阻害薬やEGFR阻害薬、MEK阻害薬等をマウスに投与し、シグナル経路活性や細胞分化の変化を免疫組織化学染色などによって解析する予定としている。
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Research Products
(1 results)