2021 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌進展におけるヒストン修飾蛋白SETDB1の機能的役割の解明
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21J01035
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小川 智 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はヒストン修飾因子であるSETDB1が膵癌の維持・進行において果たす機能的役割を明らかにすることを目的としている。 上記目的を達成するために本年度はDual-recombinaseシステムを用いた膵癌モデルマウスを作成するとともにヒト膵癌組織からのオルガノイド樹立方法の確立を目指して下記のように実施した。 まず、Flp/frtシステムで前がん病変および膵癌を形成し、タモキシフェン投与によりCre/loxpシステムでSetdb1をノックアウトできるPdx1-Flp; FSF-KrasG12D; Trp53frt/+; FSF-Rosa26CreERT2; Setdb1flox/floxマウスを作成した。必要な遺伝子座が多いため、作成に時間を要したが、順調に作成することができた。今後、このDual-recombinaseシステムによる膵癌モデルマウスを用いてタモキシフェンを投与し、その表現型(アポトーシス増加や膵癌の縮小など)を解析し、膵癌の維持・進行におけるin vivoでのSETDB1の機能的役割を評価する予定である。 さらに、膵癌モデルマウスの検討がヒト膵癌においても同様の結果を示すか検証するために、ヒト膵癌におけるSETDB1の機能の評価も必要となる。そのため、まず外科手術または超音波内視鏡下穿刺吸引法などで採取したヒト膵がん組織から3次元培養システムを用いて膵がんオルガノイドの樹立を試みた。コロナ禍のため臨床検体の採取にやや困難を生じたが、少ない症例数ではあるものの膵癌オルガノイドの樹立に成功することができた。今後効率的な樹立方法の確立などに向けて手法をより洗練させ、多数症例から多様なオルガノイドストックの作成を目指す予定である。また今後、Crisper/Cas9によるSETDB1ノックアウト用のターゲットベクター作成にもとりかかっていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではDual-recombinaseシステムによる膵癌モデルマウスを用いて膵発癌後の任意の時期にSetdb1をin vivoでノックアウトし、膵癌の維持・進行におけるSETDB1の機能的役割を明らかにするとともに、ヒト膵癌3次元培養システムを用いて患者の膵癌組織からオルガノイドを樹立し、これを用いてSETDB1がヒト膵癌の治療標的となりえるか検証する予定である。これらの達成のためにはまずDual-recombinaseシステムを用いた膵癌モデルマウスを作成するとともにヒト膵癌組織からのオルガノイド樹立方法の確立が必要である。本年度はこれらの達成を目指して下記の通り研究を実施した。 膵癌モデルマウスの作成に関しては必要な遺伝子座が多いため、作成に時間を要したが、順調に作成することができた。今後タモキシフェンを投与して膵癌が形成されたマウスにおいてSetdb1をノックアウトするとその表現型がどう変化するか解析する予定である。 また、ヒト膵癌組織からのオルガノイド樹立方法の確立に関してはコロナ禍のため臨床検体の採取にやや困難を生じたが、少ないながらもサンプルを集めることができた。これらからオルガノイドを作成することができたが、正常オルガノイドと癌オルガノイドが混在している状況であった。そのため、癌オルガノイドのみをセレクションする方法を確立する必要があったが、少ない症例数ではあるものの膵癌オルガノイドの樹立に成功することができた。今後複数の多様な膵癌オルガノイドの樹立が必要であるが、樹立方法は確立されつつあるため、徐々に症例数を増やしていけると考えられる。 上記より、本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本年度作成したFlp/frtシステムで前がん病変および膵癌を形成し、タモキシフェン投与によりCre/loxpシステムでSetdb1をノックアウトできるPdx1-Flp; FSF-KrasG12D; Trp53frt/+; FSF-Rosa26CreERT2; Setdb1flox/floxマウスの解析を進める。このDual-recombinaseシステムによる膵癌モデルマウスを対してタモキシフェンを投与し、その表現型(アポトーシス増加や膵癌の縮小など)を解析し、膵癌の維持・進行におけるin vivoでのSETDB1の機能的役割を評価する予定である。解析は肉眼による形態評価だけでなく、免疫組織学的な評価やRNA発現を評価することによって行う。 さらに、この膵癌モデルマウスから膵癌オルガノイド、細胞株を作成することによりin vitroでもSETDB1の膵癌進展における機能的役割を解析する。Setdb1をノックアウトすることによるRNA発現の変化を解析したり、orthograft、xenograftを作成してその形態・組織学的な評価を行ったりする予定である。 また、膵癌モデルマウスの検討がヒト膵癌においても同様の結果を示すか検証するために、ヒト膵癌におけるSETDB1の機能の評価も必要となる。本年度は少数例のヒト膵癌組織から3次元培養システムを用いて膵がんオルガノイドを樹立することが、複数の多様な膵癌オルガノイドの樹立が必要なため、今後も引き続きヒト膵癌オルガノイドドの樹立を継続する。またCrisper/Cas9によるSETDB1ノックアウト用のターゲットベクター作成し、多数のオルガノイドを樹立後、SETDB1のノックアウトによる増殖阻害効果を評価する。
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[Journal Article] Concurrent activation of Kras and canonical Wnt signaling induces premalignant lesions that progress to extrahepatic biliary cancer in mice2022
Author(s)
Nagao M, Fukuda A, Omatsu M, Namikawa M, Sono M, Fukunaga Y, Masuda T, Araki O, Yoshikawa T, Ogawa S, Masuo K, Goto N, Hiramatsu Y, Muta Y, Tsuda M, Maruno T, Nakanishi Y, Taketo MM, Ferrer J, Tsuruyama T, Nakanuma Y, Taura K, Uemoto S, Seno H
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Journal Title
Cancer Research
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Brg1 is required to maintain colorectal cancer stem cells2021
Author(s)
Yoshikawa T, Fukuda A, Omatsu M, Namikawa M, Sono M, Fukunaga Y, Masuda T, Araki O, Nagao M, Ogawa S, Masuo K, Goto N, Hiramatsu Y, Muta Y, Tsuda M, Maruno T, Nakanishi Y, Kawada K, Takaishi S, Seno H
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Journal Title
Journal of Pathology
Volume: 255
Pages: 257-269
DOI
Peer Reviewed
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