2022 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙精密観測に基づく軽量スカラー・ベクトル暗黒物質モデルの検証
Project/Area Number |
21J20600
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野村 皇太 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 暗黒物質 / ダークマター / ブラックホール / アクシオン / 電磁波 / X線 / 特異点 / エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
電磁波・重力波を用いた宇宙精密観測が今後進展することを踏まえ、それを活用した軽量暗黒物質モデルの検証のための理論的予言を行うことが本研究の目的であった。2022年度は、ブラックホール近傍の電磁波観測が近年急速に発展していることを大きな動機として、アクシオン・光子相互作用がブラックホール磁気圏での電磁波伝播に与える影響を研究した。本研究では、超大質量ブラックホールが特徴とする系の巨大さと強い重力により、長い伝播距離にわたって磁場が保たれること、その帰結としてブラックホール磁気圏を伝播するX線やガンマ線がアクシオンに効率的に転換することを明らかにし、その周波数帯においてブラックホール近傍から放たれる光量が最大で25%減少することを示した。この減光率はアクシオン・光子結合定数やアクシオン質量に依存しており、将来の観測でこの減光を観測すればこれらのパラメータを測定することができる。したがって、本研究により、ブラックホール観測を用いたアクシオン暗黒物質探索方法の一つを与えることができたと言える。本研究成果について、論文を執筆して発表した。また、日本物理学会を含む3件の学会・研究会にて口頭発表を行った。 また、当初研究計画にはなかったが、特異点を持たない時空のトポロジーに関する研究や、宇宙論的時空における領域の面積とエントロピーの不等式的関係に関する研究も行うことができて、それらの成果をそれぞれ論文として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電磁波・重力波を用いた宇宙精密観測を活用して軽量暗黒物質モデルの検証を行うために、軽量暗黒物質による特徴的な観測量を理論的に予言することが本研究の目的であった。2022年度に行った研究では、ブラックホール近傍の電磁波観測を用いて暗黒セクターの粒子を探索できることに注目し、実際にアクシオン・光子相互作用によって電磁波スペクトルがどのように変更されるかを明らかにした。これで既に観測量の予言という当初の目的が達成できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度に行った研究では、ブラックホール近傍の電磁波観測にアクシオン・光子相互作用がもたらす影響を評価した。ブラックホールは、重力波観測や影の撮像などによって近年特に観測が発展している対象であるため、2022年度の研究成果を生かし、今後もブラックホール周辺での軽量暗黒物質の振る舞いに注目した研究を行いたい。また、軽量暗黒物質の宇宙論的発展についても引き続き研究対象とし、観測量の予測へ繋げる予定である。
|