2023 Fiscal Year Annual Research Report
パルサーとGRBの詳細観測を可能にする原子核乾板時刻付与機構の開発
Project/Area Number |
22KJ2237
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小田 美由紀 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | ガンマ線 / 原子核乾板 / 検出器開発 / 宇宙線 / 気球実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀塩フィルムの一種である原子核乾板は、荷電粒子の飛跡を高い空間分解能で記録するものの、現像するまで飛跡を蓄積し続けるため本来時間情報を持たない。多段シフターは、複数フィルムの位置関係を時間に従って意図的に変えることで時間情報を獲得する。現像後、記録された飛跡を一つずつ再構成した際に再現された位置関係から、到来時刻を知ることができる。 sub-GeV/GeVガンマ線の精密観測を目指す気球搭載型エマルション望遠鏡では、多段シフターを用いて記録した電子対生成事象に対しタイムスタンプを行っている。筆者は、エマルション望遠鏡での大口径面積、長時間、高時間分解能観測を実現する新型多段シフターの研究開発を進めている。 本年度は、2023年4月に実施した豪州気球実験(ISAS,JAXAが提供する大気球による飛翔機会:b23-01)にて新型多段シフターを運用し、フライトデータによる性能評価を行った。新型多段シフターを導入することで前回実験の6倍以上の大面積化と、24時間17分の長時間観測を達成した。 フライト終了後すぐに日本に冷蔵輸送されたフィルムは、岐阜大学にて現像を完了し、現在、名古屋大学の自動飛跡読み取り装置を用いたスキャンが進行中である。 一部の面積での初期解析結果では、シフターがオペレーション通りに駆動していたことを実証し、時刻付与の際の飛跡再構成精度も昨年度行った恒温恒湿槽での環境試験と同等であった。 また検出器内で生じたハドロンジェットと思われるイベントを用いて、時間分解能評価を行った。イベントを構成する複数の飛跡に付与された時刻の広がりは0.15秒となり、ガンマ線天体を0.1度の精度で結像するのに必要な時間分解能を獲得した。イベントによっては、数十ミリ秒の時間分解能も獲得できている。
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Research Products
(3 results)