2022 Fiscal Year Annual Research Report
多様な一般家庭環境における宅内センシングとデータ分析基盤の開発
Project/Area Number |
22J11292
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松井 智一 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 行動認識 / 機械学習 / IoT / ユビキタスコンピューティング / 行動変容 / 健康状態推定 / スマートホーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,居住者の健康寿命延伸に向けて,多くのユーザにとって利用しやすく,かつ分析可能なデータを提供するセンシング基盤の開発を目的としている.目的の達成のために,当該年度では以下のような課題を設定している.課題a.様々なセンサから得られる情報を基にした行動認識技術の開発,課題b.得られる行動認識結果が家庭間で転移可能な学習手法の開発 課題aを達成するために,ピエゾセンサを用いた振動情報による行動認識手法の提案を行った.振動情報は居住者の特に細かい動作を認識でき,カメラやマイクによるセンシングよりもプライバシーの侵害感が低く,宅内環境での受容性が高いメリットが有る.この研究の成果は国内・国際研究会にて発表済みである.また,人物のボーン情報を用いた行動認識手法の開発も実施しており,研究会で発表済みである. 課題bを達成するために,家庭間で転移が容易なデータとして,マイクロ行動認識手法の提案を行っている.従来の粗い粒度のマクロ行動(料理,食事,睡眠など)認識と比較して,マイクロ行動認識では手を洗う,食材を切る,食材を煮込むなどのより粒度の細かい行動を認識することを目指している.これらの認識結果は,従来のマクロ行動認識結果よりも柔軟にデータ転移が可能であると考えている.点群情報を用いたマイクロ行動認識手法に関する論文は国内会議で発表済みである. その他にも,本研究内容は行動認識結果の応用先を考慮したシステム,要件設計が必要である.したがって,認識結果の応用システムとして高齢者健康状態推定システムや行動変容システムの開発を行っている.成果は国内外会議や国際学術論文誌で発表している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において提案していた2つの要素はセンサ構成の異なる家庭から得られるデータを統合して連携できる「ホームOSの構築」と,家庭ごとに独立するデータとそのデータに基づいて得られる知識を共有する手法「特性の異なる家庭間知識共有手法」の開発である.ホームOSの構築に関する項目は以下の通りであり,本年度は主にこれに関する研究を実施した:実施項目(1-1):各生活行動に付随して実施される,ジェスチャ・移動・操作などのマイクロ行動の組み合わせを行動ごとに明らかにする.実施項目(1-2):種類の異なるセンサからマイクロ行動を認識し,その組み合わせから,統一的なデータ表現である仮想行動センサを定義する.実施項目(1-3):仮想行動センサの値に基づき,センサ構成の違う家庭間でデータ転移を行い,機械学習による行動認識モデルを構築し,評価する. 実施項目1-1,1-2,1-3について,点群や振動情報を用いたマイクロ行動認識手法に関する検討を実施し,国内外の会議で発表済みであり,更に継続して研究を行っている.現在得られている課題として,マイクロ行動の行動クラス表現手法がスケーラビリティに欠けることが挙げられるが,これを解決するために現在検討している言語情報によるマイクロ行動認識に向けた行動の表現手法についても論文執筆を行う予定である.また,本研究遂行の上で行動認識に関する要件定義のために,行動認識結果の応用システムに関しても検討する必要があった.そのため,応用システムの一例として健康状態推定システムに関する研究を実施し,国内外の会議や学術論文誌で発表を行っている. 総じて,おおむね順調に計画は進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,主に研究課題2「特性の異なる家庭間知識共有」に関する研究を実施する.具体的には,知識の共有を行えるようなマイクロ行動認識表現を獲得するために,自然言語分野の技術である分散表現を利用することを検討している.現在の計画では,提案手法によって「行動の分散表現」を獲得することで,行動をベクトルで表現し,演算可能な形に変換する技術を開発する計画である.また,申請書中に記載している「家庭のデジタルツイン構築」についても,現在急速に実サービスでの利活用が進められているLLM(Large Language Model)などを活用して実現することを検討している.具体的には,仮想的な家庭情報をLLMによって出力させ,その結果を擬似データとして機械学習モデルの事前学習に利用する手法などを検討している.この構想は近日中に論文で執筆する計画である. また,開発した機械学習モデルおよびマイクロ行動認識手法が有効かどうかを確かめるために,ある程度制限を設けた生活実験も計画している.この実験をいくつかのスマートホームを有する研究拠点で実施することによって提案手法の有用性を確かめる計画である. 総じて,今後の研究計画においても概ね申請書通りの計画で進行している.実験についても,まずはスマートホーム等のテストベッドで実験を行った後,行動認識システムのユーザーインターフェースを明瞭・簡潔にした上で一般家庭に展開することを目指す. なお,本研究に関する共同研究も多数計画しており,今後の研究も概ね計画通りに推進できると考えている.
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