2022 Fiscal Year Annual Research Report
時空間データの特性に適応する実践的プライバシ保護技術に関する研究
Project/Area Number |
22J23910
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
笹田 大翔 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 差分プライバシー / 時空間データ / プライバシー保護 / 紛失通信 / データセキュリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は時間的・空間的な傾向を維持可能なプライバシ保護手法の実現を目的としている。既存のローカル差分プライバシ(LDP)は敵対者によるデータ増幅送信やプライバシ保護強度の改ざんのような汚染攻撃に脆弱であり、収集後のデータがもつ統計量を極端に歪曲させられてしまうという問題があった。これは、データ収集者がデータ保持者であるクライアントを暗黙的に信頼しなければならないことに起因している。それに対して本研究では、データ収集者がクライアントを一切信頼できない前提のもと、新規のLDPプロトコルを設計した。提案プロトコルでは、端末を所持するクライアントが個々に送信データを操作したとしても、紛失通信によってネットワーク上でのデータサンプリングを行い、送信レートを制御する。また、送信レートを制御することでLDPに必要な雑音量が時々刻々と変化してしまうため、制御比率に適応して雑音印加量を自動調整する機構の開発に着手した。これによって脆弱とされていた汚染攻撃を緩和し、時間的・空間的な傾向を維持するデータ収集を実現した。ただし、クライアントの移動手段次第では送信レート制御によってデータ本来がもつ統計量を保存しきれない場合があることが判明したため、時間的・ 空間的な傾向を表す統計量の変化を加工前後で最小化するための工夫が必要であると結論付けた。そのため、次年度では時間的・空間的な傾向を保存可能なプライバシ保護手法の検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度として、当初の研究計画通り最初の課題であるLDPプロトコルの脆弱性対処が実施できた。紛失通信による送信レート制御で、LDPプロトコルが脆弱とされていたデータ増幅送信やプライバシ保護強度改ざんによる影響を緩和し、時間的・ 空間的な傾向を部分的に保存することに成功した。検討過程で計画段階にはなかった課題も生じたが、対応できたことからおおむね順調だと言える。 これまでのLDPプロトコル設計・実装に関して国際論文誌での掲載1件、国際会議での発表2件、国内研究会での発表2件を達成している。また、当初の予定にはなかった暗号分野での課題が途中過程で生じたため、これについては該当分野の専門家が所属するフランスのTelecom SudParisと共同研究として着手している最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的の達成についてはまだ課題が多く、これらについては2023年度および2024年度の取り組みによって解決する予定である。次年度では、まず2022年度で判明した課題を解決するべく、プライバシ保護加工による時間的・空間的傾向の消失を防ぐための提案を行っていく必要がある。具体的には、時間的・空間的傾向がプライバシ保護によって消失しないよう、例えば端末側で保存できるように事前計算し、協調的に雑音印加を施す等を検討している。今年度のようにその過程で解決しきれなかった課題や、当初の予定にはなかった新たな課題が生じた場合、その都度対処する予定である。
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