2021 Fiscal Year Annual Research Report
冷却極性分子を用いた電子の電気双極子モーメント測定による時間反転対称性の検証
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21J01252
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
平本 綾美 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 電気双極子モーメント / eEDM / SiPM |
Outline of Annual Research Achievements |
ACME実験は極低温まで冷却した分子のビームを用いることで、電子の電気双極子モーメント(eEDM)をこれまで世界最高精度で探索してきた。これにより素粒子の標準模型を超えた新粒子に対し強い制限を与えることが可能であり、現在さらに30倍の測定感度向上を目指して実験装置のアップグレードを行なっている。本年度の研究ではそのアップグレードの一環として、信号読み出しに用いる光検出器Silicon Photomultiplierモジュール(SiPMモジュール)の開発と量産を行なった。 まず最初に、SiPMモジュールの基本的なデザインを決定し性能評価を行なった。入射光に対する出力信号の線形性や一ヶ月程度の長期連続運用における出力の安定性などを測定し、開発したモジュールが次世代のACME実験に必要な要求を満たしていることを確認した。 次に、ACME実験が行われるアメリカの大学にSiPMモジュールを持ち込み、冷却分子ビームを用いた信号の測定を行うことで、これまで信号の検出に用いられていた光電子増倍管と比べSiPMモジュールが3倍程度の検出効率を持つことを確かめた。 今年度の最後には、決定したSiPMモジュールのデザインをもとに実験に用いられる8台と予備2台で計10台のSiPMモジュールの生産を行なった。それぞれ基本性能を評価し、10台ともがこれまでの試作機と同等に実験の要求を十分に満たす性能を持つことを確認した。さらに8台のモジュールを同時駆動する試験を行い、個別に駆動した場合と性能が変わらないことを確認中である。同時駆動試験が終了すれば、SiPMモジュールをアメリカに持っていき実験装置に組み込むことが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の最終目標は10台のSiPMモジュールを生産し実用可能にすることであったため、概ね予定通りに進んでいるといえる。開発したSiPMモジュールの性能も概ね当初の設計どおりの性能を発揮しており、実験の要求を満たしている。 新型コロナウイルスの影響により頻繁にアメリカと日本を行き来することが困難であったため、SiPMモジュールの開発以外の部分に多くは関わることができなかった点は次年度の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、同時駆動の試験で問題のないことを確認した後に完成した10台のSiPMモジュールをアメリカへ持っていく予定である。次期ACME実験はアップグレードにより実験装置全体が新しくなっているため、新しい装置へのSiPMモジュールの組み込みを行い、信号となる光の収集効率などを確認する。その後、冷却分子ビームを用いた測定をはじめ、令和4年度中にeEDMの物理測定を開始することを目指す。 またACME実験とは別に、次世代EDM実験に向けて岡山大学における分子冷却技術を発展させるための準備を行う。そのために、CaOH分子のバッファガス冷却実験を行う。
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