2023 Fiscal Year Annual Research Report
培養細胞発現系に代わる昆虫の味覚受容体―リガンド解析系の構築
Project/Area Number |
22KJ2312
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高井 嘉樹 広島大学, 統合生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 味覚受容体 / 産卵選好性 / 寄主選択 / 家畜化 / 化学感覚 / 産卵刺激物質 / 食草 / クワコ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は培養細胞発現系に代わる昆虫の味覚受容体―リガンド解析系の構築を目指した。供試生物には、申請者が扱いに慣れている鱗翅目のクワコと、その寄主植物であるクワを用いた。私は、PD採用前に、クワコ雌成虫の肢の感覚神経が、桑葉抽出物に対して電気生理学的に応答することを見出した。この応答は、産卵場所の認識に貢献していると考えられた。 先ず、クワコの成虫肢を用いたRNA-seq解析に着手した。未交尾の成虫を集めて、味覚器が密集している成虫肢第5フ節を雌雄ごとに採取し、それぞれからTotal RNAを抽出した。これらのサンプルを用いてRNA-seqを外注し、解析を行った結果、23の味覚受容体候補遺伝子を見出した。次にリアルタイムPCRで発現量の整合性を確認した後に、雄よりも雌で発現量の多い上位7遺伝子について機能解析に進んだ。この機能解析において、申請者が独自に考案した実験系が機能するかどうか、且つ実用的か否かを評価した。方法としては、ショウジョウバエの摂食行動を司る甘味受容神経に、クワコの味覚受容体候補遺伝子を発現させるものである。野生型のショウジョウバエは、甘味に対して摂食行動を示すが、桑葉抽出液には示さない。一方でショウジョウバエに導入されたクワコの遺伝子が、桑成分の受容体であった場合は、甘味だけでなく、桑葉抽出液に対しても摂食行動が観察されるはずである。私は、GAL4/UASシステムを用いて、クワコの遺伝子をショウジョウバエ味覚神経で発現させた。その結果、遺伝子組換え系統の中から、桑葉抽出液に摂食行動を示す系統を見出すことに成功した。よって、ショウジョウバエを用いた昆虫の味覚受容体―リガンド解析系が実用可能なことが示された。加えて、家畜化の影響を調査するために、クワコと共通の祖先を有するカイコについても、成虫肢で発現する味覚受容体遺伝子の機能解析を進めた。
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