2022 Fiscal Year Annual Research Report
レゾルシンアレーンカプセルの分子認識を利用した超分子オプトードの開発
Project/Area Number |
21J22939
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
原田 健太郎 広島大学, 先進理工系科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ホスト・ゲスト化学 / 超分子カプセル / 分子認識 / キラル誘導 / 円偏光発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では,四つのビピリジン骨格を有するレゾルシンアレーンキャビタンドが一価の銅イオン存在下で自己集合することでD4対称性の超分子カプセルを形成することを報告している。本カプセルにキラルな4,4’-ジアセトキシビフェニルゲストが包接されると,二つのジアステレオマーの間にエネルギー差が生じ,らせん反転によって二つの存在比が変化する。また,包接させたキラル分子を再沈殿により除去することで空のキラルカプセルが得られる。
前述した単分子からなるキラル分子を本カプセルの不斉誘導に利用する際,次の二つの問題点がある。一つ目は,誘導した後に除去することが困難であるという点である。二つ目は,カプセルに包接されるゲスト分子の大きさはカプセルの内部空孔の大きさに大きく依存するため,カプセルの大きさに合わせて一からキラル分子を設計・合成する必要があるという点である。今回私は,キラル源と大きさを調整する骨格を水素結合で連結したキラルな水素結合三量体をキラル誘導に用いるキラル成分として設計することにした。この水素結合三量体は,水素結合という共有結合に比べて弱い力で連結されているため,再沈殿での除去が容易になった。また今後の研究で,より大きな内部空孔を有する超分子カプセルからキラルカプセルを得る場合,キラル源はそのままで大きさを調整する分子構造の設計をするだけでよい。よって,キラル誘導に用いるキラル構造体の設計および合成の簡便性が向上した。今回設計したキラルな水素結合三量体は以前のキラル単分子に匹敵するキラル誘導のジアステレオ過剰率を示した。よって,キラルな水素結合三量体は従来のキラル単分子に代わる有用な骨格になったといえる。
最後に得られたキラルカプセルに,発光団を有するアキラルな分子を包接させ,発光団をキラルな配置に誘導することで円偏光発光が発現することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外部キラルによって誘導されたキラルカプセルのキラル情報を光学的に検出するためには,ジアステレオ過剰率が高く,合成が簡便なキラル誘導体を開発することが不可欠である。そこで今回,以前に報告されている方法よりも合成的に簡便で適用範囲の広いキラルな水素結合三量体を設計および合成した。また,キラルカプセルのキラル空間に適切な発光団を含むアキラル分子を包接することで円偏光発光というキラル光学特性を創出することができた。これはキラルな分子センサーを開発する上で非常に有用な性質を見出すことができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究により,キラルな空のカプセルを簡便に調製することができた。今後は,このキラル空間を不斉合成に利用する方向で研究を進める。具体的には,アキラルなエステル化触媒ゲストを合成し,キラルカプセルに包接させることで,反応時にキラルな反応場を提供できるようにする。これにより,エナンチオ選択的なエステル化反応が進行するのではないかと考えている。具体的な実験としては,ゲストとキラルカプセルとの会合定数を反応溶媒となり得るクロロホルムやテトラヒドロフラン中で測定し,反応条件下で充分包接された状態になるゲストを探索する。その後,円二色性吸収スペクトルより,キラルカプセルからゲストへのキラル誘導の有無を調べる。最後に,温度,溶媒,基質などを変え,より高いエナンチオ選択性を与えるエステル化の速度論的光学分割を探索する。
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