2022 Fiscal Year Annual Research Report
ニワトリにおける新規神経ペプチドを介した脂質代謝調節機構の解明
Project/Area Number |
22J14515
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 正暉 広島大学, 統合生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 視床下部 / ペプチドホルモン / ウズラ / 脂肪蓄積 / ニワトリ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は新規の視床下部分泌性因子neurosecretory protein GL(NPGL)及びneurosecretory protein GM(NPGM)に関して、鳥類(ニワトリ)を用いた機能解析を進めてきた。その結果、NPGLとNPGMは肝臓や脂肪組織で脂肪蓄積を促す作用を有することを見出している。研究代表者はNPGLとNPGMが鳥類の新しい脂質代謝調節因子であると考え、中枢から末梢組織への作用メカニズムに着目した。 本年度は新型コロナウイルスや鳥インフルエンザ蔓延の影響により、ニワトリの生体の入手が困難であった。そこで性成熟が早く、省スペースで多頭飼育が可能なウズラに研究対象を変更した。しかしウズラにおけるNPGLとNPGMの先行研究はなく、前駆体遺伝子の同定から研究を開始した。前駆体遺伝子の塩基配列を解析した結果、ウズラにおいてもNPGLとNPGMに相同な配列が存在することを明らかにすることができた。 雌雄における遺伝子発現量を定量PCRで解析した結果、NPGLの発現量は雌で多く、NPGMの発現量に雌雄差はなかった。24時間の絶食負荷を行ったところ、雄のNPGL及びNPGMは発現量が増加したのに対し、雌ではNPGMのみ発現量が増加することを見出した。これらの結果から、NPGLとNPGMの遺伝子発現は性ホルモンの影響を受ける可能性が示唆された。 ウズラの脳室内に有機化学合成したNPGLを13日間の投与した結果、NPGLを投与した群で摂食量及び組織重量(脂肪組織、肝臓、筋組織)が有意に増加することを見出した。この結果からNPGLの脂肪蓄積作用はウズラにおいても保存されていることが示された。一方、筋組織の増加はニワトリでは見られなかった現象であることから、ウズラのNPGLは筋組織内にも脂肪蓄積を促進する作用を有する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨今の新型コロナウイルスや鳥インフルエンザ等の影響によりニワトリ成体を購入することができなかったため、ウズラに研究対象を変更した。ウズラにおけるNPGL、NPGMに関する報告がないことから、前駆体遺伝子の同定から始まり、基礎的情報を集めることから行なうことになったことが進捗の遅れに影響した。
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Strategy for Future Research Activity |
喫緊の課題としてウズラにおけるNPGM投与による表現系解析を行う必要がある。ペプチド合成機で合成したNPGMを脳室内に慢性投与し、体重、摂食量、組織重量の解析を行う予定である。 NPGLとNPGMの遺伝子発現には性差が見られたことから、性ホルモンとの関連性が示唆される。そこで生殖腺除去や性ホルモンの投与がNPGLとNPGMの遺伝子発現に与える影響を解析する予定である。 昨年度の研究成果から、NPGLがウズラにおいても脂肪蓄積を促進することを明らかにしている。ウズラは渡り行動を行うことから、渡りの準備のために脂肪を蓄積する期間が存在する(渡り準備期)。研究代表者はこの渡り準備期とNPGLの脂肪蓄積作用に関連性があるのではないかと考えている。本研究の目的はNPGL及びNPGMの個体レベルでの作用メカニズムの解明であることから、NPGLが渡り行動という特定の行動を誘起する因子であれば、作用メカニズムの解明が大きく進展すると思われる。
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