2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J14581
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
今川 大樹 広島大学, 先進理工系科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 反芳香族性 / シクロブタジエン / クロスカップリング / ケイ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最もシンプルな反芳香族分子であるシクロブタジエンにおける積層多量体の合成を検討し、三次元芳香族性の発現や反芳香族性の抑制など期待される電子状態変化を実験的に明らかとすることを目的としている。本年度は主に、目的物の合成に向けた合成経路の開拓に取り組んだ。 これまでシクロブタジエンの合成等価体として用いてきたテトラへドランでは実現し得なかった、求電子的にも求核的にもシクロブタジエンユニットを導入できる前駆体の開発とグラムスケール合成に成功した。本前駆体を経由して、スタニル化、シリル化、フッ素化、アルキル化、アリール化といった多様な変換反応が適用可能であり、シクロブタジエンユニットを有する化合物のライブラリーを大幅に拡張できた。特に、温和な条件のもとクロスカップリングによってアリール化が可能になったことは意義深い。テトラへドランを用いる利点であった「シクロブタジエンへの任意の置換基導入」を短工程で達成できる本前駆体を足がかりとして、広範な分子デザインを実現できる合成経路を武器として積層シクロブタジエンの合成に取り組んでいる。 併せて、ケイ素を含有するクラスター状化合物シラピラミダンの研究成果に関して、J. Am. Chem. Soc., 2023, 145, 4757-4764にて報告した。シラピラミダンに関する研究と、本研究で達成した自在なシクロブタジエンユニットの導入法とを組み合わせ、多種多様なピラミダンが合成可能となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、シクロブタジエン上の置換基変換反応の開発に取り組んだ。当初計画していたスタニルテトラへドランを前駆体として用いる合成経路は奏功しなかったものの、代わりとしては余りある、新たな前駆体の合成に成功し、種々の変換反応に適用できたことは大きな進展であるといえる。多様な分子設計を可能とする手法を開発できたため、今後の本手法の発展は重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立した条件をもとに、シクロブタジエンの積層において最適なリンカーを探索する。具体的には、シロキサン部位を含むフレキシブルなものと芳香環を基調とした剛直なものを検討している。 また、本研究で新たに合成した前駆体の応用可能性を示すため、積層シクロブタジエンだけでなく、分子内にシクロブタジエンを複数有するような化合物や典型元素を頂点にもつピラミダンなど、これまで合成が困難であったり、調査が不十分であった分子群の性質解明に取り組む。
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