2023 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of a novel carrier doping method for molecular crystals and precise electronic state control
Project/Area Number |
22KJ2334
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
眞邉 潤 広島大学, 先進理工系科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | イオン交換 / クラウンエーテル / 単結晶X線構造解析 / 電気伝導性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,イオン交換機能を利用したキャリア量制御法の開発を目指した。対象物質には,クラウンエーテルによって形成されるイオンチャネル構造と,局在電子系を形成する[Ni(dmit)2]が共存した結晶Li2([18]crown-6)3[Ni(dmit)2]2 (Li塩)を用いた。このLi塩を金属イオンが含まれた水溶液中に浸すと,結晶内のLi+と水溶液中の金属イオンが交換される。この機能を利用してCa2+イオンと電子受容性のCu2+イオンを同時に交換することで,結晶に注入するキャリア量の制御を行った。 前年度までに,Ca2+イオン交換後の結晶に対する単結晶X線構造解析やイオン交換機構の検討及び,Ca2+イオンとCu2+イオンの同時交換とその元素分析・電気伝導性評価を実施した。また,結晶中にCa2+イオンとCu2+イオンを同時に導入することで,結晶中のキャリア量制御に成功した。本年度では,イオン交換に用いる水溶液中のCa2+イオンとCu2+イオンの濃度比(仕込み比)を調整することで,結晶中に導入するキャリア量(Cu2+イオンの量)の制御を行った。導入量を最適化していく中で,最も低い室温比抵抗は1.9Ωcm示し,Li塩の値(48MΩcm)に比べて7桁も低下することを明らかにした。以上の結果は,イオン交換を利用することで,これまで困難であった分子性結晶へのキャリアドーピングの可能性を発見したという点で学術的に重要な知見をもたらしたと考えている。今後,この手法を他の物質に対しても適用していくことで,超伝導相転移を示す材料の発見にもつながると考えられる。
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