2022 Fiscal Year Annual Research Report
がん幹細胞性の発生・維持に、細胞密度は関与するのか?
Project/Area Number |
22J23055
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
幸柳 尚規 山口大学, 共同獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / SET / 細胞密度 / SETBP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、がんの再発の原因としてがん幹細胞が注目を集めている。がん促進因子SETは、ヒストンシャペロンとして機能し、エピジェネティックな制御を通して、ES 細胞やiPS 細胞の幹細胞性の維持に寄与する(Bui PL. Cell Reports. 2019 など)。また、当研究室では以前、様々ながん種においてSETが、がんの幹細胞性を高めること(Enjoji S. Mol. Can. Res. 2018)、培養中の細胞密度の上昇はSETと結合し安定化するSETBP1の発現を誘導し、SETが蓄積することを報告している(Kohyanagi N. J. Biochem. 2022)。これらの背景から、細胞密度の上昇によるSETの蓄積は、ヒストン修飾レベルを変化させ、幹細胞性を高めるのではないかと考えられる。そこで本研究では、培養細胞密度の上昇がヒストン修飾レベル、幹細胞性に与える影響を解析する。また、これまでに明らかにされていないSETBP1の転写制御機構についても細胞密度の上昇によりSETBP1の転写が促進されることを踏まえ、解析を行う。 これまでに6種類の細胞株(A549、293T、U2OS、HOS、MEF、MIAPaCa-2)において、細胞密度の上昇させたところ、H3K4me3、H3K9me3、H3K27me3などのヒストン修飾レベル、CD44、KLF4などの幹細胞マーカーの発現量が変化することを明らかにした。また、DNA 配列からプロモーター領域と転写因子の結合位置を予測するPromoter2.0などの複数のin silico解析から5ヶ所のSETBP1プロモーター領域の候補とそこに結合する転写因子が推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞密度の上昇がヒストン修飾、幹細胞マーカーに与える影響については、計画通りに研究が進行している。 現在、当初の予定よりも多い6種類の細胞株で解析ができており、今後これらの細胞株で解析を進めていく。SETBP1のプロモータ領域の切断体の作製には遅れが生じているが、順次作製中である。これらの切断体を用いて、今後ルシフェラーゼレポーターアッセイやクロマチン免疫沈降法を行い、プロモーター領域とそこに結合する転写因子の同定を行う。以上のように、概ね計画通り研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞密度の上昇により変化が認められたヒストン修飾レベル、幹細胞マーカーの発現量については、SET発現の抑制もしくは過剰発現が与える影響を解析することで、細胞密度の上昇にともなうSETの蓄積により変化するヒストン修飾、幹細胞マーカーを明らかにする。 SETBP1の転写制御機構については、現在、これまでの知見をもとにSETBP1プロモーター領域の切断体を作製中である。 今後、これらの切断体を用いてルシフェラーゼレポーターアッセイやクロマチン免疫沈降法を行い、プロモーター領域と結合する転写因子の同定を行う予定である。同定された転写因子については、その発現抑制が、細胞密度上昇にともなうSETBP1の転写促進、SETの蓄積に与える影響についても解析する。
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