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2020 Fiscal Year Annual Research Report

栄養応答シグナル mTOR複合体2 を介した新規リソソーム活性制御機構の解明

Research Project

Project/Area Number 20J14993
Allocation TypeSingle-year Grants
Research InstitutionThe University of Tokushima

Principal Investigator

坂井 麻衣子  徳島大学, 大学院栄養生命科学教育部, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2020-04-24 – 2022-03-31
Keywordsイソラムネチン / エンドサイトーシス-リソソーム分解経路 / mTORC2 / GATA3
Outline of Annual Research Achievements

エンドサイトーシス-リソソーム分解経路は、細胞外の異常分子を除去する重要な機構である。これまでの研究により、食品由来ポリフェノール化合物であるイソラムネチンが、マクロファージ様細胞株において本分解経路を亢進することを明らかにしている。また、イソラムネチンの活性発現には mTORC2 活性の抑制と遺伝子発現制御を伴うことが明らかとなっており、本作用機序を詳細に追及することがエンドサイトーシス-リソソーム分解経路に対する新たな制御機構の解明に繋がると考えられる。このような背景から、本作用機序に関与する転写調節因子の存在を想定し、その同定を目標として研究を進めた。
イソラムネチン処理により活性制御を受ける転写調節因子をインフォマティクス解析したところ、エンドサイトーシス-リソソーム分解活性の亢進に関与する転写調節因子として、GATA3 の同定に成功した。さらに、GATA3 は mTORC2 により活性制御を受けることも確認され、mTORC2-GATA3 経路が本分解経路に対する重要な制御機構であることが新たに見出された。
また、イソラムネチンの作用点を詳細に検討したところ、イソラムネチンはエンドソームの輸送過程を亢進することが示唆された。エンドサイトーシス-リソソーム分解経路は、細胞外からの基質の取り込み、エンドソームのリソソームへの輸送、リソソームにおける分解という多段階の過程を経て進行するが、これまで、本分解経路を亢進させる戦略として、エンドソームの輸送過程に着目した研究は少ない。
本研究成果は、mTORC2-GATA3 経路によるエンドソームの輸送制御が本分解経路の亢進に対する有用なターゲットとなり得ること示唆しており、食を介した新たな疾病予防戦略の提案に繋がるものと考えている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

令和2年度に計画していた研究課題に関しては、期待以上の進展があった。
前年度までに、食品由来ポリフェノール化合物であるイソラムネチンが J774.1 マクロファージ様細胞における mTORC2 活性を抑制すること、また、それに伴い、エンドサイトーシス-リソソーム分解経路を活性化させることを見出していた。令和2年度は、本作用の発現機序に関与する転写調節因子の同定を計画していた。イソラムネチンを処理した細胞のトランスクリプトーム情報をインフォマティクス解析に供することで、関与する可能性の高い転写調節因子を5種にまで絞り込み、さらに遺伝子破壊実験による検証を重ねたところ、イソラムネチン処理による遺伝子発現の変動には、転写調節因子 GATA3 が大きく寄与することが明らかとなった。GATA3 がエンドサイトーシス-リソソーム分解経路を制御するという知見はこれまでに報告されておらず、本研究により新規な制御機構を見出すことができた。
また、計画していた課題以外の発見もあった。研究計画を立ち上げた当初、イソラムネチンが細胞外異常分子の分解を亢進させる背景には、リソソーム機能の向上が関与するものと予想していた。しかし、イソラムネチンの作用点を詳細に検証したところ、リソソーム機能には影響を及ぼさない一方で、細胞内におけるエンドソームの形成過程を亢進し、分解基質のリソソームへの輸送を活性化させることが明らかとなった。これまで、マクロファージによる細胞外分子の除去作用を亢進させる戦略として、分解基質の細胞内への取り込み過程やリソソーム機能が標的とされてきたが、本成果により、エンドソームの形成や輸送が有用なターゲットとなる可能性が新たに見出された。

Strategy for Future Research Activity

本研究成果は、2021年2月に学術誌へ投稿したが受理には至らなかった。そのため、以下の点についてさらなる解析を行い、再投稿する計画である。
1つ目は、イソラムネチンがエンドサイトーシス-リソソーム分解経路に与える影響をより詳細に解析する。これまでの実験から、イソラムネチンが初期エンドソームを増加させること、エンドソームのサイズを増大させることを見出しているが、実際に初期エンドソームから後期エンドソームへの成熟過程が亢進しているか否かは明らかではない。そこで、蛍光免疫染色を用いて、初期エンドソームと後期エンドソームを共染色し、初期エンドソームから後期エンドソームへ移行中のエンドソームを捉えることで、エンドソームの成熟が亢進しているか評価する。
2つ目は、本研究で新たに見出した mTORC2-GATA3 経路によるエンドサイトーシス-リソソーム分解経路の制御が、 J774.1 細胞株以外の細胞や組織においても保存された機構であるか確認する。マウスから採取した腹腔マクロファージおよび肝臓や腎臓などの組織由来の細胞に対して mTORC2 阻害剤を処理し、GATA3 の核内移行やエンドサイトーシス-リソソーム分解経路が亢進するか検証を行う。

  • Research Products

    (5 results)

All 2020

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] Isorhamnetin, a 3’-methoxylated flavonol, enhances the lysosomal proteolysis in J774.1 murine macrophages in a TFEB-independent manner.2020

    • Author(s)
      Maiko Sakai, Kohta Ohnishi, Masashi Masuda, Hirokazu Ohminami, Hisami Yamanaka-Okumura, Taichi Hara and Yutaka Taketani
    • Journal Title

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      Volume: 86 Pages: 1221-1231

    • DOI

      10.1080/09168451.2020.1727309

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] イソラムネチンは J774.1 マウスマクロファージ様細胞株において TFEB 非依存的にリソソームのタンパク質分解を促進する2020

    • Author(s)
      坂井麻衣子, 大西康太, 増田真志, 大南博和, 奥村仙示, 原太一, 竹谷豊
    • Journal Title

      ビタミン

      Volume: 94 Pages: 524-527

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 栄養素応答シグナルmTORC2を介したリソソーム活性制御機構の解明2020

    • Author(s)
      坂井 麻衣子,大西 康太,増田 真志,大南 博和,奥村 仙示,原 太一,竹谷 豊
    • Organizer
      第74回日本栄養・食糧学会大会
  • [Presentation] Mφ における異常タンパク質分解を促進するイソラムネチンの作用機序解析2020

    • Author(s)
      坂井麻衣子,大西康太,増田真志,大南博和,奥村仙示,板倉英祐, 原 太一,竹谷 豊
    • Organizer
      日本農芸化学会2020年度 中四国支部大会 (第57回講演会)
  • [Presentation] イソラムネチンによるエンドソーム成熟過程の亢進を介した異常分子除去作用2020

    • Author(s)
      坂井麻衣子,大西康太,春本恵里花,増田真志,大南博和, 奥村仙示,板倉英祐,原太一,竹谷豊
    • Organizer
      2020年度日本フードファクター学会・日本農芸化学会西日本支部合同大会

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Published: 2021-12-27   Modified: 2023-08-01  

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