2022 Fiscal Year Annual Research Report
アテローム性動脈硬化の治療を目指したHDLの質的変化を規定するタンパク分子の探索
Project/Area Number |
22J14879
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
立花 洸季 徳島大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 高密度リポタンパク質 / ApoA-I binding protein / アテローム性動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
高密度リポタンパク質(HDL)による脂質引き抜き反応は、末梢組織のコレステロールを除去する主要な経路であり、アテローム性動脈硬化症への治療応用が期待されている。しかし、HDLの「質」であるコレステロール引き抜き活性を制御する因子が明らかとなっていないことが、HDLの治療応用への課題となっている。本研究では、HDLの「質」への影響がほとんど未開拓である、多様なHDL積載タンパク質のうち、どのタンパク質がHDL活性へ寄与するのかを解明する。 高密度リポタンパク質(HDL)によるマクロファージからのコレステロール引き抜きを測定する実験系を構築した。更に、HDLに結合するタンパク質 (ApoA-I binding protein:AIBP)がHDLの活性を向上させることを大腸菌を用いたリコンビナントタンパク質を用いて確認した。AIBPがHDLと結合し、活性を向上させるためには細胞外へ分泌される必要がある。そこでAIBP生理機能のさらなる解明のため、AIBP血中量の評価を行った。ヒト血清を用いたEnzyme-linked immune-sorbent assay (ELISA)により、低濃度ながらAIBPがヒト血清中に存在することを明らかとした。また、マウス組織および培養細胞を用いた実験からAIBPの分泌源と思われる臓器を明らかにした。そこで、培養細胞を用いた実験系を用いてAIBPの分泌量が変化する因子を探索したところ、とある生理活性物質の添加が細胞外AIBP量を増加させることが明らかとなった。ヒト血清において、この生理活性物質の血中量とAIBPの血中濃度を比較したところ優位な正の相関を示した。以上よりHDLの活性に寄与するタンパク質であるAIBPの生理的な制御機構を明らかにした。今後、この生理活性物質およびAIBPがアテローム性動脈硬化の進展へどのように寄与するかについて評価を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HDLに結合するタンパク質 (ApoA-I binding protein:AIBP)がHDLの活性を向上させることを明らかにした点で進捗があった。更にELISA法を用いたAIBP血中濃度の測定に成功し、ヒトおよびマウスの血清AIBPを評価することが可能となった。AIBP血中濃度の結果から生理活性物質との相関が観察されたため、生理活性物質の機能を踏まえた研究を展開していく。また、アテローム性動脈硬化や肥満等を含めた病態時の血清サンプルを準備中であり、血清AIBPを測定することで病態進行との関連を明らかにする。以上よりおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
発見した生理活性物質およびAIBPがアテローム性動脈硬化の進展へどのように寄与するかについて評価を進める。また、アテローム性動脈硬化と同様に脂質蓄積との関連が深いNASH (非アルコール性脂肪肝炎)病態におけるAIBP量の変化を評価する。また、AIBPの部分的なアミノ酸変異体を作成し、それぞれの活性および細胞内、体内の動態を評価することでAIBPの作用機序の解明を進める。
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Research Products
(2 results)