2020 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding the transmission dynamics of norovirus with microbial data in wastewater and machine learning algorithms
Project/Area Number |
20J00793
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
三浦 郁修 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2025-03-31
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Keywords | 感染症 / 数理モデル / 下水疫学 / ノロウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では都市内の微生物情報を大量に含む水インフラを活用し、「観測されない不顕性感染 者・非来院患者を含むノロウイルス感染動態の理解」及び「微生物データや気象データ等の大 規模データと機械学習モデルを用いた感染者予測・検知」を行うことを目的とした。本研究では、従来の数理疫学モデルを拡張し微生物データを組み込んだ数理モデルを構築する。 当初の研究計画ではノロウイルスの下水中濃度の時系列データをモデリングすることを予定していたが、COVID-19パンデミックに伴い、SARS-CoV-2を適用事例としながら同様の手法の開発を行った。 本年度の成果として(1)下水中のウイルス濃度と地域内の感染者数を関連付けるモデリング手法の提案(2)罹患率が低い場合に、下水中で観測されたウイルス濃度から潜在的な感染者数をシミュレートする手法の提案が主に挙げられる。前者については、オランダ国内のすべての自治体から集積した下水濃度データと入院患者数を用いながら、(地域差を表現するような)混合効果を階層ベイズモデルの枠組みで表現するモデリング手法を提案している。後者については、既往の患者中の糞便濃度の時系列データを用いながら、感染成立から糞便中へのウイルス排出までの機構をモデル化し、糞便中ウイルス濃度の経時変化を推定した。その後、その推定した濃度を基に、下水中で観測されたウイルス量から潜在的な感染者数をシミュレートした。 同様の手法はどちらもノロウイルスのような腸管系ウイルスにも適用可能であるが、エンベロープの有無等の特性から水中での挙動は異なることといったウイルス学的な側面や、感染者の感染成立-発症-ウイルス排出のプロセスが異なる感染自然史の側面についてはさらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19のために、予定していたようなノロウイルスの時系列データを入手することは困難になったが、同等の(もしくはそれ以上の観測頻度および複数の観測地点での)データがSARS-CoV-2を対象に得られた。それらを用いることで、当初予定していた手法の開発はおおむね順調に進展できている。 本年度の成果として(1)下水中のウイルス濃度と地域内の感染者数を関連付けるモデリング手法の提案(2)罹患率が低い場合に、下水中で観測されたウイルス濃度から潜在的な感染者数をシミュレートする手法の提案が主に挙げられる。前者については、オランダ国内のすべての自治体から集積した下水濃度データと入院患者数を用いながら、(地域差を表現するような)混合効果を階層ベイズモデルの枠組みで表現するモデリング手法を提案している。後者については、既往の患者中の糞便濃度の時系列データを用いながら、感染成立から糞便中へのウイルス排出までの機構をモデル化し、糞便中ウイルス濃度の経時変化を推定した。その後、その推定した濃度を基に、下水中で観測されたウイルス量から潜在的な感染者数をシミュレートした。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、COVID-19により予定していたようなノロウイルスの時系列データを入手することは困難になったが、計画以上の観測頻度および複数の観測地点でのデータがSARS-CoV-2を対象に得られている。 一方、長期の時系列データが必要な手法については、実証的に提案手法を評価することが困難になったため、方針の変更が求められる。具体的には、シーズナルな流行のベースラインをモデリングし、そこから突発的なアウトブレイクが生じた時の検出を一つの研究目標としていたが、外部影響による大きい構造的な変化(すなわちCOVID-19に伴う突発的なノロウイルス罹患率の低下)があるため、こうしたデータで提案手法を評価することは困難になる。 次善の策として、観測データが限られている(長期でえられないような)状況下で、潜在的な感染者数をシミュレートする手法や、流行の継続確率をモデル化する手法を提案することを次の方針として予定している。
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Research Products
(9 results)