2023 Fiscal Year Research-status Report
環境モニタリングデータを用いた生態毒性予測手法の開発
Project/Area Number |
22KJ2360
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
柳原 未奈 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 特別研究員(CPD)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2026-03-31
|
Keywords | 生態リスク評価 / 水質 / 化学物質 / バイオアッセイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、水質の化学分析・毒性データ、底質の化学分析・毒性データから、水生生物に対する化学物質の毒性を予測し、化学物質を管理する仕組みを構築することである。本年度は、オランダのKWR Water Research Instituteにて共同研究を推進し、1)化学物質の物理化学的な性質から毒性を予測するモデルの検討と2)化学物質の生態リスク評価のための手法の評価を中心に行った。 1)では、それぞれの化学物質の物理化学的な特徴(分子量や沸点、疎水性など)に着目し、それらと毒性の関係性を解析した。データベースから収集したデータをもとに、物理化学的な情報を説明変数、報告されている毒性値(AC50値など)を被説明変数として、線形・非線形モデルを用いた毒性予測モデルの構築を試みた。結果として、モデルの予測性能に改善の余地がみられたため、モデルの改善について引き続き検討を進めている。 2)では、水生生物の化学物質への感受性を種間で比較し、化学物質の生態リスク評価を行う方法である「種の感受性分布(SSD)」に着目し、毒性予測を行うための準備としてモデル選択の影響評価を行った。SSDの推定にあたっては、水生生物の毒性データを適合させる確率分布の選択が不可欠であるが、その影響に関する研究は限られていた。そこで本研究では複数のモデルでSSDを推定し、モデルの予測能力や要約統計量を比較した。その結果、多くの場合、対数正規分布が他のモデルと同程度かそれ以上の予測性能を示すことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、化学物質の物理化学的な特徴と、毒性の関係性を解析したという点で、新しいデータをもとにモデル構築を試みた。本研究の大きな目的の一つである、毒性予測のためのモデル構築に関して、新たな視点を取り入れた形となった。環境中に存在する化学物質の中でも、特に残留性が高く、生態系への影響が懸念される物質に注目し、物質の特徴と毒性の関係性について成果を報告する予定である。さらに、種の感受性分布(SSD)を用いた生態リスク評価において、手法の中での基礎的な部分であるモデル選択について検討を行った。その結果、毒性評価をより簡便に行うための一つの方法として、対数正規分布を選ぶことについて、国際誌・国際学会において成果を発表した。さらに、実際の環境試料の毒性評価にむけて、in vitroバイオアッセイのための実験環境を整えた。以上のことから、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集したデータセットや構築した手法をもとに、化学物質の構造や濃度の情報から毒性を予測するための検討を進める。一部の予測モデルにおいて、予測性能が低いという結果が見られたため、今後改善に向けてデータ・モデルの観点から見直す予定である。今回収集したin vitroのバイオアッセイの結果をさらに活用するために、国内外の研究者ネットワークを用いたデータ収集を行うことも計画している。また、並行して環境試料の採取をすすめ、バイオアッセイや化学物質によって毒性評価・化学物質の濃度分析を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
計画を前倒しして実験を行う予定で、前倒し請求したが、他の備品の準備の遅れにより実験が元の計画通り翌年度に行われることとなったため、次年度使用額が生じた。
|