2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J00414
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻井 悠希 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 植物生態学 / リン / 土壌栄養 / 光合成 / 葉寿命 / 元素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンは植物の光合成を制御する重要な元素だが、その制御機構の全貌はよく分かっていない。葉内のリン分配様式が光合成速度と関わるが、リン分配の制御理論を構築できていないことが一つの理由である。こうした背景から、本プロジェクトでは次の3つの研究課題を設定した。(1)リンが強く欠乏し、かつ多様な気候帯を含むオーストラリア大陸をモデルとして、樹木葉内のリン画分の広域パターンを解明する;(2)九州大学をはじめ、マッコーリー大学、シドニー大学、西シドニー大学、西オーストラリア大学、中国科学院などを含む国際ワーキンググループを立ち上げ、地球規模で葉リン分配様式を一般化する;(3)コスト最小化理論に基づいたリンによる光合成制御の新たな理論を構築し、窒素分配様式との関係を組み込んだ光合成動態の一般モデルの構築を目指す。 初年度である今年度は、課題1を中心に研究活動を行った。サンプル採集と化学分析のためにマッコーリー大学(オーストラリア)に滞在した。オーストラリアの幅広い環境傾度(8サイト)からサンプルを取得する予定であったが、コロナウイスルの流行に伴う都市封鎖により研究活動が大きく制限された。このため予定を変更し、土壌リン濃度の大きく異なる3サイトで集約的にサンプルを採取し葉のリン分画分析を行った。都市封鎖中は大学への出入りが制限されたため分析が大幅に遅れたが、年度の後半にはある程度分析を行うことができた。したがって、必要最低限のデータはそろいつつある。 研究成果は、Australian Society of Plant Scientistsのニューサウスウェールズ州会議で口頭発表したほか、第69回日本生態学会福岡大会(オンライン)で口頭発表をおこなった。日本生態学会での発表について、Best English Presentation Awardも受賞した。これらの内容は、現在英文論文を執筆しており国際誌に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、オーストラリアの幅広い環境傾度(8サイト)から植物の葉サンプルを採集し、環境傾度と葉内リン分配様式の関係を明らかにする予定であった。しかし、コロナウイスルの流行に伴う都市封鎖により野外調査が大きく制限された。このため調査地を特に重要な3サイトに限定し、集約的にサンプルを採取し葉のリン分画分析を行った。都市封鎖中は大学への出入りが制限されたため分析が大幅に遅れたが、年度の後半にはある程度分析を行うことができた。したがって、研究はやや遅れているものの必要最低限のデータはそろいつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の前半は、サイト数を増やしつつ文献からも葉リン画分データ収集し、地球規模での葉内のリン分配様式の一般化(課題2)を予定通り進める。オーストラリア―日本間の移動制限が緩和されつつあるので、日本国内でのサンプリングも予定している。 来年度の後半及び最終年度の前半には、リンによる光合成制御の新たな理論の構築(課題3)にも取り組むことを予定している。課題3の達成に必須である国際ワーキンググループの開催を見越して、各国の研究者とのミーティングを積極的に行っていく。
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Research Products
(3 results)