2021 Fiscal Year Annual Research Report
リアルタイム観察技術の開発による二次元物質CVD成長のデザイン
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21J00904
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平良 隆信 九州大学, グローバルイノベーションセンター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | グラフェン / 化学気相成長法(CVD法) / 熱放射光学顕微法 / 粒界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Cu(111)薄膜基板上でのグラフェン化学気相成長(CVD)におけるグラフェン粒界の形成機構の解明を目的とし、CVD成長後のCu(111)薄膜基板の大気中加熱によるグラフェン粒界の観察と、熱放射光学顕微法(Rad-OM法)によりCVD成長過程をリアルタイム観察するための準備を行った。また、グラフェンCVD成長の研究紹介記事を発表した。 サファイア上にスパッタ成膜したCu(111)薄膜基板上のグラフェンCVD成長では、グラフェン粒の方位が揃うと粒同士が原子レベルで接合し、粒界の無い単結晶のグラフェンが得られるという報告があるが、粒の方位のみが粒界形成の要因であるかは不明確である。また、グラフェンCVD成長後のCu基板を大気中で加熱すると、粒界で酸化銅が生成し、粒界を光学顕微鏡で観察できる。そこでこの手法を用いて、グラフェン粒界の生成と粒の形状・角度等との関係を調べた。 さらに、粒界形成についてRad-OM法を用いて解析するための準備を行った。Rad-OM法では、グラフェンとCuが成長温度(約1000℃)で発する熱放射光を光学顕微鏡で観察することにより、グラフェンCVD成長をリアルタイムに可視化できる。本手法を用いて粒界形成を解析するため、昨年度まで使用していたRad-OM法およびCVDチャンバー装置一式を前所属研究室から現所属研究室へ移設した。移設後、CVD成長の効率化のため装置全体の小型化と配管の最適化、観察の高精度化のため光学顕微鏡と放射温度計の位置合わせ機構の改造を行った。また、本研究で用いるサファイア上に成膜したCu(111)薄膜基板の観察に対応するため、基板の固定・加熱方式を改良した。 また、受入研究者の吾郷教授と共著で、研究紹介記事をVacuum and Surface Science(表面と真空)誌にて発表した。私は、Rad-OM法を用いた研究成果としてこれまでに原著論文で発表した、核発生点の解析、Cu箔粒界の影響、高温フィラメントによる原料ガスの分解効果について紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、本年度の初頭にRad-OM法およびCVDチャンバーの装置一式を前所属研究室(千葉県)から現所属研究室(福岡県)へ移設し、改造して本研究課題に用いる予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令により、装置の移設時期が遅れたため、Rad-OM法装置一式の改造および本手法を用いた実験の開始が遅れた。 装置移設前は、Rad-OM法を用いない手法として、CVD成長後のCu(111)薄膜基板の大気中加熱によるグラフェン粒界の観察と解析を行った。移設後は、装置全体の改造およびCu(111)薄膜基板の観察に対応するための加熱方式の改良を行った。これらの進展は、次年度以降の研究を進めるための基礎になるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に移設・改良したRad-OM法の装置を用いて、Cu(111)薄膜基板上でのグラフェンCVD成長をリアルタイム観察・解析する。また、成長後の基板の大気中加熱による観察・解析と、その他の分析手法による解析も行い、グラフェン粒界の形成機構を解明する。これらの成果をとりまとめ、学会および論文誌にて発表する。 さらに次の課題として、六方晶窒化ホウ素(h-BN)のCVD成長のリアルタイム観察技術の開発に取り組む。
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