Outline of Annual Research Achievements |
本年度は, 鉛直方向に周期境界条件を課した3次元層状領域において, 回転と安定成層の効果を考慮に入れた回転成層Boussinesq方程式を対象とし, 同方程式の初期値問題に対する時間大域的適切性, 及び安定成層の効果を表す浮力周波数を無限大とする特異極限問題を考察した. 先行研究Goh-Wayne (2019)では, Sobolev正則性1をもつ初期速度場に対して, 鉛直方向における積分平均をとった初期渦度ベクトルの第3成分に対する可積分性を仮定した際に, 回転速度が十分大きい場合の同方程式の時間大域的適切性, 及び時間無限大における解の2次元Lamb-Oseen渦への漸近が示されている. 本研究では, Sobolev正則性1をもつ初期値に対して, 浮力周波数が十分大きい場合の同方程式の時間大域的適切性, 及び浮力周波数を無限大とする特異極限において, 同方程式の時間大域解である3次元速度ベクトル場が, ある極限方程式の時間大域解へ収束することを, 時間無限区間の時空間積分ノルムにおいて証明した. 特に, 特異極限問題に関して, 解の鉛直方向における積分平均をとると, 分散性が得られない2次元流の項が現れるため, 解析を行う上で工夫が必要となる. そこで, Chemin (1997), Charve (2018)の手法を用いることにより, 解の時間微分に関するエネルギー不等式, 及び解の時間微分と安定成層の効果を表す歪対称な線形項の和に関する時間各点評価を確立した. 上記の評価と非線形解のエネルギー評価を用いることにより, 浮力周波数を無限大とする特異極限において, 同方程式の解が極限方程式の解へ収束することを証明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の研究成果は, 3次元層状領域における回転成層Boussinesq方程式の初期値問題に対して, 時間大域的適切性及び特異極限問題における解の収束を証明したことである. 特に, 解の時間微分に関するエネルギー不等式, 及び解の時間微分と安定成層の効果を表す歪対称な線形項の和に関する時間各点評価を用いることにより, 分散性が得られない2次元流の項に対して, 浮力周波数を無限大とする特異極限の証明に成功した. 本研究で得られた解析手法は, 今後の研究課題である回転磁気流体方程式及び成層流体方程式の特異極限問題への応用が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 2021年度の研究で得られた線形解に対する時空間積分評価, 及び非線形解に対するエネルギー評価を応用させて, 3次元層状領域における成層流体方程式, 回転の効果を考慮に入れた磁気流体方程式に対する時間大域的適切性及び特異極限問題を考察する. 特に, 定数ベクトル周りの回転磁気流体方程式の線形解に対して, 回転の効果を考慮に入れた時空間積分評価を確立し, その応用として回転速度無限大とする特異極限問題を考察する. 回転及び成層が解の漸近挙動に及ぼす影響を解明することを目指す.
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