2023 Fiscal Year Annual Research Report
励起エネルギー準位制御と長寿命化戦略に基づく高効率アップコンバージョン材料の創出
Project/Area Number |
22KJ2393
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 直幸 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | フォトン・アップコンバージョン / 三重項状態 / 可視光 / 紫外光 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機分子の三重項状態によって引き起こされる三重項-三重項消滅(TTA)現象は吸収した光のエネルギーをより高いエネルギーの光に変換する(フォトン・アップコンバージョン)機構の一つである。TTAに基づくフォトン・アップコンバージョン(TTA-UC)は太陽光強度(~mW/cm2)の光で駆動させることができるため、太陽電池や光触媒と組み合わせることでデバイスの光利用効率を高めることが可能である。これまでに申請者らは高効率な可視-紫外TTA-UCを示す分子性材料の開発に成功している。前々年度と前年度には、紫外発光性アクセプター色素をペロブスカイトナノ粒子や重金属を含まないドナー色素と組み合わせることで、緑色光から紫外光へのアップコンバージョンや重金属フリーTTA-UCを達成してきた。また、低揮発性TTA-UC溶液とポーラスフィルムから構成されるフィルム材料を作製し、高効率なアップコンバージョン効率を得ることに成功した。このフィルムはマイクロレンズアレイと組み合わせることで、太陽光よりもさらに弱い光でもTTA-UCを駆動させることができた。これらの材料は高いアップコンバージョン性能を示すが、TTA-UC性能を本質的に向上させるためにはアップコンバージョンの発光色素を探索、拡張することが必要である。 本年度は、新規アップコンバージョン色素の探索、合成および評価を試みた。これまではナフタレンに三重結合を有する分子骨格を利用してきたが、分子設計の拡張性が低いため、エネルギー状態が類似した分子構造をDFT計算も行いながら探索した。結果として、高い蛍光量子収率や高いアップコンバージョン効率を示す発光色素を得ることができた。今回の知見は、光化学分野における分子設計に活かすことができるものであり、TTA-UCの応用化に資するものであると考えられる。
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