2021 Fiscal Year Annual Research Report
実機高温プラズマ装置における粒子リサイクリングに対するヘリウムの影響に関する研究
Project/Area Number |
21J21782
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岳 其霖 九州大学, 総合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | QMSガス絶対感度校正 / 水素リサイクリング / FESTA / 粒子バランス / プラズマ長時間放電 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、実験中の粒子数は九州大学の球状トカマク実験装置QUEST及び高速試料搬送装置(FESTA)に使用されている四重極質量分析装置(QMS)で測定した値の絶対校正を実施した。繋がっている二つの真空容器(QUESTとFESTA計測チャンバー)を一定時間(2分)に封じ切りにし、絶対校正されたフローメーターで一定粒子数(水素ガス)を封じ切りにした真空容器内に注入した。真空容器からアウトガスは別途計測して差し引いた。理想気体方程式を用い、QMSで計測した電圧信号値(圧力)を粒子数に変換し、絶対感度校正を行った。 従来はプラズマ曝露試料中に残留している水素吸蔵量を観測するためには、一旦試料を取り出して別チャンバーに移していたが、FESTAに昇温脱離(TDS)計測用の赤外線ランプを設置することで、試料を大気にさらさずにTDS計測ができるようになる。これは大気曝露による表面酸化の影響を排除できる点でデータ精度の向上及び動的吸蔵と静的吸蔵の合計が計測できることからこれまで得られていなかった反射率実測に貢献できる。購入した大気側用昇温脱離(TDS)装置の予備実験を行った。予備実験では、FESTA計測チャンバーの構造及び計測状況を模したモックアップを製作し、試料への赤外線の照射による昇温を実施した。結果として昇温されたチャンバー内壁から大量のアウトガスが放出されることが観測された。このアウトガスは試料中の残留ガスの計測に影響すると考えられるため、計測チャンバーの再設計を検討している。 QUESTにおいて、FESTAを用いて室温でステンレス316L試料の長時間プラズマ曝露実験(約900秒)を3放電連続で実施することに成功した。試料からの水素リサイクリングを直接計測し、試料表面からの放出束が増加していることが確認できた。この結果は、水素リサイクリングが放電履歴に依存することを明確に示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい四重極質量分析装置(QMS)に交換することにより、実験中精度よく燃料粒子の水素イオン電流値が計測できるようになった。QMSの絶対感度校正は粒子バランスを評価することに対して重要である。絶対感度校正の結果はこれからのリサイクリング計測に重要な役割を果たすと考えられ、結果を国際会議で発表し、雑誌に投稿した。このことは計画以上の進展であった。 TDS予備実験において、試料だけではなく、チャンバー自体を昇温させる結果となった。チャンバー内壁から放出されるアウトガスの低減のため、来年度から計測チャンバーを再設計することとしている。 前年度の実験では、計画の通り、高速試料搬送装置(FESTA)を用い、QUEST水素プラズマに曝露したステンレス316L試料からの水素リサイクリングを直接計測することに成功した。提唱されている水素バリアモデルを用い、水素リサイクリングと関連している粒子放出挙動の素過程を考慮しつつ、プラズマ放電開始から計測終了まで、全時間にわたってモデル計算を行った。その結果、プラズマに曝露を繰り返すことにより、試料内にトラップされた粒子数が増加し、水素リサイクリングが活発になっていることが想定された。この結果からステンレス316Lのプラズマ対向壁を室温程度の低温で使用した場合、水素リサイクリングが放電履歴に依存することを想定させる。この結果は、実機実験でしばしば観測されるプラズマ生成時の再現性の悪さに関係している可能性もある。今後もFESTAを用い、試料からの水素リサイクリングの定量化を進めることで、今後の核融合研究に貢献する。
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Strategy for Future Research Activity |
実験では、QUESTプラズマに曝露する前後の試料表面状態を電子顕微鏡等で確認して比較する。TDS装置を用い、プラズマ曝露による試料内に残留している水素粒子を評価する。前年度中成功に計測した水素リサイクリングと合わせて実機での水素の反射率を定量に評価するとともに、水素リサイクリングの物理過程を解明する。 核融合炉の候補材料として、タングステンの水素リサイクリングを計測する必要があるため、前年度と同様な放電条件で、FESTAを用いて水素プラズマに連続に曝露して実験を行う。その後、TDS昇温実験から、タングステン内に残留の水素ガスを計測することでタングステン材料での水素反射率を評価する。この結果をステンレス316L試料と比較し、材料による水素リサイクリング及び反射率の違いを定量的に評価する。また、プラズマ曝露試料表面の再堆積層の影響も定量に評価する。 核融合炉ではヘリウムリサイクリングが核燃焼効率を大きく変化させることが予想されている。実験では、ヘリウムを吸蔵させておいた試料をQUEST水素プラズマに曝露する。試料内の捕獲ヘリウムが水素リサイクリングに及ぼす影響をFESTAで定量に評価する。また、水素プラズマが捕獲ヘリウムを脱離させるプラズマ誘導脱離も計測する。これらの結果は実機プラズマで得られる初めての定量実験結果であるため、核融合研究炉に対する貢献が大きいと考える。
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[Presentation] Research on Dynamic Retention Using Fast Ejecting System of Targeted Sample (FESTA) in QUEST2021
Author(s)
YUE Qilin, HANADA Kazuaki, OYA Makoto, MATSUO Shogo, KOJIMA Shinichiro, HIRANAKA Yoshiki, IDEI Hiroshi, ONCHI Takumi, KURODA Kengoh, YOSHIDA Naoaki, IKEZOE Ryuya, LIU Yukai, FUKUYAMA Masaharu, HASEGAWA Makoto, SHIMABUKURO Shun, HIGASHIJIMA Aki, NAGATA Takahiro, KAWASAKI Shoji
Organizer
The 24th International Conference on Plasma Surface Interactions in Controlled Fusion Devices (PSI-24)
Int'l Joint Research
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[Presentation] Estimation of Dynamic Retention with Fast Ejecting System of Targeted Sample (FESTA) in QUEST2021
Author(s)
YUE Qilin, HANADA Kazuaki, OYA Makoto, KOJIMA Shinichiro, IDEI Hiroshi, ONCHI Takumi, KURODA Kengoh, YOSHIDA Naoaki, IKEZOE Ryuya, FUKUYAMA Masaharu, HASEGAWA Makoto, SHIMABUKURO Shun, KAWASAKI Shoji
Organizer
15th International Workshop on Hydrogen Isotopes in Fusion Reactor Materials, Online Meeting
Int'l Joint Research
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