2023 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子の直接高偏極化を可能にするtriplet-DNP材料の開発
Project/Area Number |
22KJ2401
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
折橋 佳奈 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 三重項電子 / 動的核偏極(DNP) / 金属有機構造体(MOF) / 核磁気共鳴(NMR) / 磁気共鳴イメージング(MRI) |
Outline of Annual Research Achievements |
採用者は、電子スピンの高偏極状態を核スピンに移行し、NMR や MRI の検出感度を向上させる動的核偏極法(DNP)の研究において、生体内での分子プローブの直接観測を志向した多孔性 DNP 材料の開発に取り組んできた。中でも光励起三重項を利用する動的核偏極法(triplet-DNP)は、光励起によって自動的に生成する非熱平衡状態の電子偏極を核へと移行する手法で、室温かつ低磁場で核の高偏極化を達成することが可能である。採用者はtriplet-DNPの研究においてこれまで検討されてこなかった、三重項偏極を生成する偏極源が密に配置された系に注目し、偏極源の配置設計による電子スピン状態の制御を目指し研究を行った。偏極源がピラー部位として配位するピラードレイヤー型の MOF を設計・合成し、この MOF において三重項電子偏極の緩和が抑制されることを明らかにした。さらに、このMOFでは集積した色素分子間で光励起により電荷分離でラジカル種が生成することを発見し、このラジカル種の電子スピン緩和時間を詳細に調べた。量子センシングへの応用にむけ実質上の量子センシングの検出時間の上限であるコヒーレンス時間(T2)及びT2 の上限であるスピン-格子緩和時間(T1)を長く保つことができる材料の開発が求められており、多孔性金属錯体 (Metal-Organic Frameworks, MOFs) は、細孔中で外部から導入したプローブ分子の挙動の観測などの応用が期待される一方で、複雑な運動モードを有することから室温で長い T1 及び T2 を達成することは困難であった。申請者は色素を集積して配置したMOF中で光励起によって発生した色素ラジカルの電子スピンが室温において非常に長いT1, T2を持つことを明らかにし、MOF中における色素の配置や配向の影響についても知見を得た。
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