2022 Fiscal Year Annual Research Report
代謝耐性型ラクトシルセラミドプローブの開発と自然免疫機構解析への応用
Project/Area Number |
22J11706
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森山 貴博 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 糖脂質 / 有機化学 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
好中球による自然免疫は、病原体に対して最初に作用する生体防御機構であるが、結核や急性呼吸窮迫症候群などの病態形成にも深く関与する。このため、好中球の自然免疫を制御する分子メカニズムを解明することは創薬研究において意義深い。ヒト好中球にはラクトシルセラミドが主要糖脂質として存在し、自然免疫に深く関与することが知られている。しかし、ラクトシルセラミドは細胞内の代謝酵素によって容易に分解されるため、機能解析が困難であり、自然免疫における詳細な役割は明らかになっていない。本研究では、ラクトシルセラミドの機能と、自然免疫の分子メカニズムの解明を志向して、代謝耐性を有するラクトシルセラミドの分子プローブの開発に取り組んでいる。 本年度は、主に二つの課題に取り組んだ。一つ目に、糖鎖のO-グリコシド結合の酸素原子を炭素原子に置換した代謝耐性型ラクトシルセラミドアナログの合成を目指した。検討の結果、1. 還元的カップリング反応による直接C-グリコシル化反応、2. 四置換オレフィンの立体選択的な水素添加反応、3. セラミドアクセプターを用いた立体選択的なO-グリコシル化反応の3つの鍵反応により、アナログの効率的合成を実現した。二つ目に、ラクトシルセラミドの蛍光標識プローブの開発に取り組んだ。独自の蛍光標識脂肪酸の合成法を確立した後に、それらを導入したラクトシルセラミドアナログを種々合成した。それらの構造活性相関研究により、親化合物の生物活性を有する蛍光標識ラクトシルセラミドプローブの開発に成功した。今後は、本年度の二つの成果を融合させ、代謝耐性型蛍光標識ラクトシルセラミドプローブを開発する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子プローブの基本骨格となる代謝耐性型ラクトシルセラミドアナログを合成できたことは、本研究において大きな進歩である。また、複雑なC-グリコシドの効率的合成法を確立できたことは、有機合成的にも重要な成果である。さらに、徹底的な構造活性相関研究により、生物機能を保持したラクトシルセラミドの蛍光標識プローブを開発できた。この二つの成果の融合により、代謝耐性型蛍光標識ラクトシルセラミドプローブを開発できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
代謝耐性型ラクトシルセラミドアナログの合成技術と、生物活性を有する蛍光標識ラクトシルセラミドプローブの構造的知見を融合させ、代謝耐性型蛍光標識ラクトシルセラミドプローブを開発する。これによる生細胞イメージングや、さらなるケミカルバイオロジー研究により、好中球の自然免疫の分子メカニズムの解明を目指す。
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