2023 Fiscal Year Annual Research Report
ナノプラスチックのベクター効果:生態影響評価に向けた数理モデルの構築
Project/Area Number |
22KJ2453
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高井 優生 九州大学, 農学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / ベクター効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロプラスチック(MP)は多くの水環境から検出されており、化学物質とのベクター効果による水生生物への影響が懸念されている。ベクター効果について建設的な議論を行う際にはベクター効果を定量的に評価する手法が必要であるため、本研究ではベクター効果を定量的に評価する手法を開発することを目的として研究を実施した。具体的にはジャワメダカ(Oryzias javanicus)への多環芳香族炭化水素(PAHs)とMPの同時曝露試験を実施し、その結果をコンパートメントモデルで解析することでベクター効果を定量的に表現することを試みた。まず、PAHsの一種であるアントラセン(Ant)を用いた曝露実験において、粒径2および10 umのMPがジャワメダカへのAnt蓄積を加速させることが示された(Takai et al., 2023)。また、本結果を用いたモデル解析によってコンパートメントモデル中でベクター効果をベクター効果定数として定量的に表現することが可能になり、化学物質の水中濃度が高くなるとベクター効果による体内濃度増加への寄与が大きくなるが、環境中で想定されうる濃度においてはベクター効果による寄与は小さくなることが示唆された。さらに、化学物質のMPへの吸着量もベクター効果に大きく影響する要因であることが考えられた。これらを確かめるために、MPおよび疎水性の異なるPAHs3種類(ナフタレン, Nap; Ant; クリセン, Chr)を用いてジャワメダカへの同時曝露試験を行った。その結果、環境中で想定されうる化学物質濃度ではMPがジャワメダカへの3種PAHs蓄積に与える影響は極めて微弱であることが明らかになった。本研究の結果より、実環境においてはMPと化学汚染物質、双方の濃度が高くなった際に生物へのベクター効果が顕在化する可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)