2022 Fiscal Year Annual Research Report
Effects of deer-induced vegetation changes on forest carbon budget, Southern Kyushu, Japan
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22J20086
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 隼人 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ニホンジカ / キュウシュウジカ / 植生採食 / 過食 / 炭素固定 / 炭素蓄積 / 炭素収支 / 純一次生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の森林地ではシカの過度な植生採食(過食)によって植生構造が変化し、深刻な森林劣化に繋がることが危惧されている。本研究は、炭素収支の観点から実際に生じた過食に伴う森林劣化量を明らかにするための準備を行った。研究計画に従い、調査対象を過食により異なる森林構造を持つ、1)下層植生の存在する針広混交林、2)下層植生の消失した針広混交林、3)シカ不嗜好性灌木であるアセビが優占する林分、4)更新木の欠如したギャップ地の4林分タイプに定めた。九州大学附属宮崎演習林内で、各林分タイプにつき4繰り返し、計16の調査プロットを設置した。調査プロットで毎木調査、下層植生サンプリングを行い、森林の林分構造について検討を行った。この結果から、各プロットの炭素蓄積量の推定を行った。この成果は第134回日本森林学会大会でポスター発表すると共に、令和5年度に投稿論文として国際誌に発表することを予定している。各調査プロットでは、並行して各林分の炭素収支を明らかにするために、炭素収支の構成要素(一次生産量、土壌侵食量、従属栄養呼吸量)の計測と気象観測を開始した。純一次生産量の計測では、リタートラップ法による林冠の生産量と、イングロースコア法による細根生産量の計測を始めた。従属栄養呼吸量の計測では、プロット内に根呼吸を分離したトレンチングカラーを設置し、土壌呼吸全体から根呼吸を分離する計測に着手した。土壌侵食量の計測は各プロットに鉄杭と土砂受け箱を埋設しモニタリングを開始した。林内気象の計測は一部の調査プロット内で、地温、土壌水分、林内雨量を設置した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年台風第14号に起因する、2022年9月17日から同月24日まで生じた暴風雨及び豪雨により、九州大学宮崎演習林とその周辺では土砂災害(林道の崩落)が発生した。これにより、本研究の調査プロットへ約2ヶ月間アクセスできなくなった。現在も16の調査プロットのうち3プロットで車でのアクセスが不可能となっており、代わりに徒歩(1~2時間)でのアクセスを行っている。本研究は野外調査に基づく研究のため、上述のようなアクセスの悪化は研究資材の運搬労力の増加や野外調査時間の短縮など、研究の効率悪化に多大な影響を与えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請研究の期限年限である2025年まで、おおむね令和4年台風第14号によって崩落した地点は復旧されない見込みである。今後は事前に計画していた調査プロットへのアクセス時間の見込みを変更し、これを考慮した野外調査を行う。
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