2022 Fiscal Year Annual Research Report
大規模生命データから中核要素を選び取る解析法の構築
Project/Area Number |
22J20665
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 健 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 単一細胞解析 / エピゲノミクス / 空間オミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
単一細胞オミクス技術により、単一細胞レベルで転写産物の発現量やエピゲノム修飾の局在などの情報を網羅的に定量することが可能となった。一方、データの持つ細胞数×特徴量(転写産物、タンパク質等)数の膨大な情報を解釈する困難さが、生命科学分野の大きな課題となっている。特に複数のモダリティのデータを同時に取得するマルチオミクス技術や、細胞の位置情報を併せて取得する空間オミクス技術からは、膨大であることに加え性質の異なる情報を含む複雑なデータが得られる。本研究では、単一細胞オミクスデータの中でも、これらの複雑なケースについて、データ中の細胞集団を特徴づける特徴量や細胞状態の変化に影響を及ぼす特徴量など、解釈に必要な情報を獲得する技術の開発を目指す。また、併せてオミクス技術の開発を行い、新規データの取得と解釈を目指す。本年度は、(1)細胞ごとに二種類のエピゲノム情報の同時取得を行うmulti ChIL-seq法、(2)空間情報とタンパク質発現情報の同時取得を行う空間プロテオーム法の二点のオミクス技術開発に取り組んだ。これらの技術によって取得されるシークエンスデータ及び画像データを定量するためのフレームワークを確立した。さらに、骨格筋分化をモデルとした系を用い、multi ChIL-seq法によるデータの取得した。このデータを用い、RNA polymeraseIIの局在パターンから細胞の状態を推定し、その状態に応じたヒストン修飾や転写因子の局在パターンの変化の推定を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(i)複雑な単一細胞オミクスデータを解釈するためのデータ解析手法の開発、(ii)新規単一細胞オミクス技術の開発を目的としている。本年度は(ii)オミクス技術開発を主に推し進め、解析パイプラインの構築を行なった。これに際し、どのようなプロセシングを行う必要があるか、どこまで詳細な変化を捉えられているのか、といったデータの性質の把握に努めた。また、新規データの取得を行い、データの特性を用いた解析手法の考案及び実装に取り組んだ。従って、(ii)新規単一細胞オミクス技術開発は概ね完了しており、(i)データ解析手法の開発に関しても検討を行なっている状況である。以上の状況を踏まえると、当初予定していた解析を着手・遂行できており、概ね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果により、二種の新規オミクス技術の開発が概ね完了し、新規データの取得が可能となった。今後は、まずこれらの手法による新規データの取得を行い、各手法のデータの特性を活用した解析手法の開発の推進する。(1)multi ChIL-seq法によって取得した二種類のエピゲノム情報を統合した解析手法を開発する。転写活性化領域を示すヒストン修飾とRNA polymeraseIIのように局在パターンに関連のある2因子を解析対象とし、数理モデリングを行うことで、細胞状態のダイナミクスの推定を目指す。さらに、細胞状態の変遷に重要な因子の同定を試みる。(2)空間プロテオーム法によって取得した細胞の位置情報を利用した解析手法を開発する。タンパク質発現と位置情報の関連から細胞間シグナルの推定を行い、周囲の細胞に影響を及ぼすような重要なシグナルタンパク質の同定を目指す。
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