2022 Fiscal Year Annual Research Report
なぜ敷石細胞に葉緑体があるのか?敷石細胞葉緑体の独自機能と形成メカニズムの解明
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22J20905
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小畑 智暉 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 表皮特異的プロモーター |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の表皮組織のうち、葉緑体を持つのは孔辺細胞のみであるという説が教科書的な定説であるが、近年シロイヌナズナで孔辺細胞を取り囲む表皮(敷石)細胞にも葉緑体が存在することが報告された。また、我々もタバコ、キク、ハスなど多岐にわたる植物種で表皮細胞に葉緑体が存在することを確認した。一方で植物の表皮細胞でなぜ葉緑体が存在しているのかその意義については不明な点が多い。本研究では、表皮細胞でのみ葉緑体を欠損させたシロイヌナズナ系統を確立し、 環境応答や生育に影響が生じるのか解析することで表皮細胞葉緑体が保持する独自機能を解明することを目指す。目的の形質転換植物を作製するためには、表皮細胞で特異的な発現を誘導するプロモーターが必要である。しかし、これまでにその条件に適したプロモーターは知られていない。そこで本年度は、表皮細胞特異的なプロモーターの探索を行った。まず、敷石細胞と孔辺細胞をレーザーで切り出し、それぞれの細胞のRNA-seq解析を行った。次に、得られたRNA-seqデータと、葉肉細胞及び孔辺細胞のプロトプラストに対するマイクロアレイデータとを比較した。この比較解析によって孔辺細胞や葉肉細胞では発現せず表皮細胞でのみ発現する可能性が高い遺伝子を選抜した。さらに、選抜した候補遺伝子のプロモーター領域に、レポーター遺伝子(葉緑体移行シグナルが付加されたYFP)を結合させた形質転換植物を作製し、共焦点顕微鏡で各細胞の葉緑体におけるYFP蛍光を確認することで、プロモーターの組織特異性を確認した。その結果、表皮細胞特異的な遺伝子発現を誘導する有用プロモーターを単離することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに目的の形質転換植物の作製に必要となる表皮細胞特異的プロモーターの単離には成功したが、プロモーターの選抜及び形質転換植物の作製に計画以上に時間がかかり、本年度の目標であった表皮細胞葉緑体のみを欠損した形質転換植物の完成に到達していないため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度単離したプロモーターを用いて、表皮細胞葉緑体のみを欠損した植物を作製する。当初の計画では葉緑体色素合成遺伝子を組織特異的にノックダウンさせることで表皮細胞葉緑体を欠損させる予定であった。しかし、外来遺伝子を高発現させる35Sプロモーターを用いたノックダウン系統でも、葉緑体形成が著しく阻害された植物が得られなかった。そこで、標的遺伝子や配列を変更して、再度挑戦する予定である。また別の角度からのアプローチとして、高活性型クロロフィル分解酵素を過剰発現させることで、葉緑体を欠損させた形質転換植物の作製を試みている。表皮細胞特異的に葉緑体を欠損させた形質転換植物の作製後は、光や乾燥などの環境ストレスに対する応答に影響が生じるのか解析する予定である。
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Research Products
(2 results)