2023 Fiscal Year Research-status Report
なぜ敷石細胞に葉緑体があるのか?敷石細胞葉緑体の独自機能と形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
22KJ2467
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小畑 智暉 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 敷石葉緑体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物の表皮(敷石)細胞になぜ葉緑体が存在するのか、敷石葉緑体が持つ独自機能を解析することを目的とする。これまでに、葉肉組織の葉緑体形成は正常だが、表皮組織の葉緑体の発達が阻害されたシロイヌナズナ変異体gles1を用いて、敷石葉緑体の欠損によってどのような影響が生じるのか解析を行った。その結果、gles1では、塩ストレス条件下で誘導されるアントシアニンの蓄積が見られず、塩耐性も減少していることが明らかになった。加えて、gles1を孔辺細胞特異的に相補した系統では、この表現型は回復しないが、表皮組織特異的に相補した系統では表現型が回復することも確認した。これらの結果は、塩ストレス環境下でのアントシアニンの合成制御に、表皮組織の中でも敷石葉緑体が必須であることを示している。さらに、表皮組織の葉緑体が塩ストレス環境下でどのようにアントシアニン合成を制御しているのか、そのメカニズムに関しても解析を行った。これまでに、アントシアニン合成制御に寄与することが知られるジャスモン酸の、合成及びシグナル伝達を欠損した変異体で、塩ストレス環境下で促進されるアントシアニンの蓄積が阻害されることを確認した。また、この表現型は表皮特異的にジャスモン酸合成遺伝子を相補すると回復した。これらの結果は、表皮で合成されるジャスモン酸が塩ストレスに応じたアントシアニンの合成促進に重要であることを示唆している。また、gles1で塩ストレスに応じたアントシアニンの合成促進が阻害された理由として、gles1では、表皮組織の葉緑体発達が阻害されているために、ジャスモン酸合成に必要な葉緑体膜脂質が不足しており、アントシアニンの合成を活性化するために十分なジャスモン酸が合成できていない可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的であった敷石葉緑体の新規機能に関する知見を得ることができた。加えて、敷石葉緑体がどのようにアントシアニン合成に寄与するのか、そのメカニズムに関しても解析が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析から、シロイヌナズナでは、塩ストレスに応じて表皮組織でジャスモン酸シグナルが活性化することで、アントシアニン合成が促進される可能性が考えられる。現在は、この可能性について検証するために、ジャスモン酸応答性因子のプロモーター制御下でGFPを発現する形質転換植物を利用したレポーターアッセイやジャスモン酸抗体を用いた免疫染色を行っている。これらの解析によって、ジャスモン酸合成、及びそのシグナル活性が塩ストレスに応じて表皮特異的に活性化していることを確認するとともに、gles1が塩ストレス環境下でのアントシアニンを蓄積できない理由がジャスモン酸シグナルを十分に活性化できていないことにあることを示したいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度末から、ジャスモン酸シグナルを可視化及び定量化する実験系を、これまで計画していた実験に加えて実施する必要が生じた。この実験は今年度末から次年度のはじめまでかかることが想定され、定量キットなどの実験備品を追加で次年度に購入する可能性が高かったため、その費用を次年度使用額として計上した。
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Research Products
(3 results)