2022 Fiscal Year Annual Research Report
新たな量子相関の評価法の構築とそれを用いた重力の量子性の検証に関する研究
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22J21267
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三木 大輔 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 重力理論 / 量子もつれ / 量子情報理論 / オプトメカニクス / 量子制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は重力による量子もつれ生成の検証へ向けて、巨視的物体の量子状態の実現と光による量子もつれ生成に関する研究を行い、論文にまとめた。重力が量子力学に従い、演算子として作用するならば、2つの物体間に量子もつれが生じる。これを検証するには、重力と量子力学の効果が同時に現れる質量スケールが重要となる。しかし、量子領域の実験はナノグラム以下の物体を対象とするものが多く、重力の効果を検証するには、より巨視的な物体を量子状態に用意する必要がある。そこで、巨視的な鏡と光が結合した光学機械振動子系において、光の測定を通した鏡の量子制御に関する研究を行った。鏡は周囲の環境による熱揺らぎの影響で量子性が失われるが、光の連続測定やフィードバック制御、量子フィルタリングを行うことにより、熱揺らぎの影響を抑えることができる。 実験では、7ミリグラムの鏡を対象とした量子制御が行われており、近い将来、鏡の揺らぎを量子揺らぎ程度にできると予想されている。一方で、重力による量子もつれの検証以前に、このような巨視的物体間の量子もつれ自体検証できていない。そこで今年度は、重力の量子性の検証へ向けた基礎模型として、光により生じる鏡間量子もつれの解析を行った。2つの鏡は干渉計の両腕にそれぞれ位置し、結合する光の測定を通して量子制御される。このとき、出力光を干渉させることにより、光と結合した鏡間に量子もつれが生成される。実験を専門とする研究者や制御理論を専門とする研究者と議論を行いながら研究を進め、将来的に実現可能なパラメータを用いると、7ミリグラムの鏡間に量子もつれが生じることを示した。さらに、鏡を吊るす弦と鏡の回転運動を含めた模型についても共同研究を行い、より精密な量子制御模型の構築を行った。これらの研究は重力による量子もつれの理論的解析の基礎となる研究であり、巨視的な世界での量子力学の検証となる研究でもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用前から今年度に予定していた非ガウス状態の量子もつれに関する研究は早期にまとめることができた。また、今年度から次年度にかけて予定していた重力による量子もつれ生成の研究に関しては、基礎となる懸架鏡と光が結合した光学機械振動子系に関する研究を行った。重力による量子もつれ生成の検証には、巨視的な物体の量子状態が必要であるが、光学機械振動子系では相互作用する光の測定を通して、巨視的な鏡を量子制御することができる。今年度の研究では、光による量子制御を通して、7ミリグラムという巨視的な鏡間に量子もつれが生成可能であることを示した。また、鏡を吊るす弦と鏡の回転運動を考慮した模型についても研究を行い、より精密な模型を構築することができた。これらの研究を通して、実験に即した巨視的物体の量子制御模型の理解を深め、重力による量子もつれ生成の検証へ向けた基礎理論を固めることができた。このように、研究は当初の計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は光学機械振動子系を用いた重力による量子もつれ生成に関する理論的研究を行う。今年度の研究を通して、巨視的な物体の量子制御模型の理解を深めることができた。そこで、この模型に重力相互作用を取り入れ、光ではなく重力により鏡間に量子もつれが生成されるかを議論する。このとき、鏡の周囲の物体によるデコヒーレンスの影響や相互作用する光からのノイズの影響まで考慮し、実験に対応した模型を構築する。また、物体間に生じた量子もつれが光の測定を通して検証可能であるかを議論する。
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