2023 Fiscal Year Research-status Report
新たな量子相関の評価法の構築とそれを用いた重力の量子性の検証に関する研究
Project/Area Number |
22KJ2476
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三木 大輔 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 重力理論 / 量子もつれ / 巨視的量子力学 / 量子情報理論 / 光学機械振動子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は巨視的量子系の実現に向けて、巨視的な鏡と光が相互作用する光学機械振動子系に着目し、その量子制御に関する理論的研究を行った。その結果として、ミリグラム程度の質量を持つ鏡の量子状態と鏡間の光による量子もつれ生成が近い将来に実現可能であることを明らかにした。そこで、今年度は2つの量子制御された鏡を重力相互作用させたときに生じる量子もつれに関する研究を行い、論文としてまとめ上げた。 これまで量子重力に関する研究は理論研究が先行して行われており、実験的な重力の量子性の検証は全く行われていない。そのなかで、量子的な相関である量子もつれに着目した研究は実験を念頭に置いた重力の量子性を検証する新たなアプローチの一つである。今年度は、2つの光学機械振動子系において、重力による鏡間の量子もつれの生成条件を明らかにした。この系では、出力光の測定に基づいて鏡の運動を量子的に制御することにより、環境からの熱ノイズの影響を抑えることができる。本研究では、フーリエ空間において鏡の共振振動数にのみ着目して量子もつれの評価を行った。その結果として、重力相互作用が鏡と光の相互作用より支配的であるとき、鏡間に重力による量子もつれが生じることを示した。また、鏡間に重力による量子もつれが生成されるならば、出力光の間にも常に重力による量子もつれが生じることを示した。 さらに、巨視的な量子系が実現していることを検証するために、Leggett-Garg不等式の破れに関する共同研究を行った。ベル不等式の破れは量子的な相関を特徴づけるものであるが、Leggett-Garg不等式の破れは時間的な相関を特徴づける。今年度は、調和振動子とスカラー場に対してLeggett-Garg不等式の破れの評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度から今年度にかけて予定していた弦が懸架鏡に与える影響については、早期に論文としてまとめることができた。また、重力による量子もつれの生成に関する研究に関しては、測定に基づく量子制御に関する昨年度の研究を拡張し、重力による量子もつれが生成されるパラメータ領域を明らかにすることができた。その際、光学機械振動子系や宇宙実験に関する専門家との議論を定期的に行い、挑戦的ではあるが将来的に到達可能だと考えられるパラメータにおいて、重力による量子もつれが生成可能であることがわかった。他方で、巨視的な量子系が実現しているかを検証する手法として、Leggett-Garg不等式に関する共同研究も行った。このように、重力の量子性の検証に向けて基礎となる理論模型の構築を行うことができた。従って、研究は当初の予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は光学機械振動子系を用いた重力による量子もつれ生成の時間発展に関する研究を行う。今年度は、鏡の定常状態を仮定し、フーリエ空間における鏡間量子もつれの評価を行った。一方で、量子もつれの生成する時間スケールは明らかになっていない。そこで、実空間における量子もつれの時間発展に関する解析を行う。また、信号とノイズに関する評価も行い、重力による量子もつれ生成の検証を行うのに最適な理論模型について議論する。
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