2022 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織化ペプチドの分子設計に基づくエマルション型デザイナーワクチンの創製
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22J21393
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
樋口 亜也斗 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 両親媒性ペプチド / エマルション / 自己組織化 / ワクチン / 酵素反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、酵素反応により抗原を直接担持可能な両親媒性ペプチド (PA) 構造体を用いることで、安定性・生体適合性・抗原担持能という高いワクチン効果を示すために重要な特性を併せ持つ Oil-in-Water (O/W) 型ペプチドエマルションワクチンの創製を目的としている。本年度は、1. O/W 型エマルションを安定化する PA 分子の探索、2. 酵素反応による PA 構造体へのタンパク質抗原の導入、3. O/W 型ペプチドエマルションを用いたタンパク質抗原の細胞内導入に関する検討を行った。 1. N末端に疎水性置換基を導入したペプチドの N末端アミノ酸を 20 種類のアミノ酸残基で置換した PA を合成した。共焦点レーザー顕微鏡 (CLSM) 観察から、N末端アミノ酸一残基の違いでエマルション安定化能や製剤中の局在性を制御できることが示された。 2. 酵素反応による PA 構造体へのタンパク質抗原の導入を行った。モデル抗原として蛍光タンパク質を用いて酵素反応を行い CLSM 観察を行ったところ、PA 構造体上に蛍光タンパク質が集積化しており、これを用いて作製したO/W 型エマルション界面に PA および抗原タンパク質が局在することが確認された。 3. 免疫細胞へのタンパク質抗原の導入は、フローサイトメトリーや CLSM 観察により評価された。その結果、タンパク質抗原を単独で作用させた場合と比較して、酵素反応により共有結合的に修飾したO/W 型ペプチドエマルションを作用させた場合にタンパク質抗原の高い細胞取り込みが確認された。 以上のように、本研究遂行のために基盤となるPA分子設計やO/W型エマルション作製およびその評価について着実に進めることができた。これらの成果について、国内学会3件および国際学会2件の研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度である2022年度は、本研究を進めるための基盤となるO/W型エマルションの安定化が可能な酵素反応性のPA の分子設計の探索を行った。具体的にはN末端に疎水性置換基を導入したペプチドの N末端アミノ酸を 20 種類のアミノ酸残基で置換した PA を合成した。設計した PA の自己組織化挙動、酵素反応性、エマルションの界面安定化能の評価を実施し、これら全ての性質を有する PA の分子設計の傾向を明らかとした。さらに 2023 年度に実施予定であった PA 構造体へのタンパク質抗原の集積と免疫細胞へのタンパク質抗原導入の評価にも着手した。設計した PA 構造体への蛍光タンパク質抗原の集積化に成功し、これを用いてO/W 型エマルションを作製した。免疫細胞へのタンパク質抗原の導入評価において、本O/W 型ペプチドエマルション製剤の有用性が確認された。以上のことから、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2022 年度に得られたPA の分子設計と自己組織化、エマルションの界面安定化能との相関を学習用データとし、計算化学と機械学習を活用することで、より本研究推進のために優れた PA の分子設計が可能であるかを検討する。機械学習により選択された複数種類のPAを合成し、自己組織化能・酵素反応性・界面安定化能のそれぞれを評価することで機械学習の精度を確認する。精度が低い場合は学習用データを追加することで精度の向上を行う。同時に 2022 年度で得られた免疫細胞への高いタンパク質抗原の取り込み能を有するペプチドエマルションに関して、抗原担持量の最適化を行い、マウスを用いた動物実験により、抗原特異的な抗体産生量を指標にワクチン効果の検証を行う。動物実験で期待したワクチン効果が得られない場合は、PA分子設計の見直しを行う。
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